迷える小狐に愛の手を。
第十七話





chapter:打ちのめされる現実





「幸? どうしたの? なにが……っ!!」

オレのすぐ隣にいる幸を見て、身体を起こそうとすると、腰から尻にかけて激痛が走った。


あれ?

オレ、なんで腰が痛いの?

……なんて思っている間にも、幸は苦しそうに息を乱し、上下している胸を押さえている。

大粒の汗が、額からたくさん吹き出していた。

「幸? どうしたの?何があったの?」



オレはなんで、幸の隣にいるの?


神楽はどうしたの?



状況を確認しようと、痛む腰を庇(かば)いながら、そこからゆっくり起き上がる。



「っつ!!」



なんで……?

どうして?

自分の身体を見下ろした瞬間、オレの思考が止まってしまった。

だって……。

オレ、裸なんだ。


「古都、逃げろ……」


――えっ?

逃げる?

なんで逃げなきゃいけないの?



そうやって疑問を抱いている間にも、幸の調子は悪くなる一方だ。
ものすごく、苦しそう。

「幸?」

オレは敷いている白いシーツを自分の身体に巻きつけ、隣にいる幸へと、より近づく。



オレはたしかに、『そこ』にいるはずの幸を見た。


それなのに、『そこ』に幸はいない。




――いや、違う。

幸はいる。

だけど、幸の身体が、変化していく……。



幸は腹の底から、低い唸り声を上げ、身体からは白い湯気のようなものが立ち込めている。

白い湯気のようなコレが何なのかは知っている。

これは妖気だ。


だけど、なんで?

どうして人間であるはずの幸が、妖気を持っているの?


疑問が疑問を呼ぶ間にも、幸の口は裂け、口の中にある犬歯は、鋭く尖っていく――。

まるで、獣のように……。





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