迷える小狐に愛の手を。
第十七話





chapter:打ちのめされる現実







――都。
――古……都。


誰?

オレを呼ぶの……だれ?



閉ざした視界の外で、誰かがオレを呼ぶ。


誰だろう?

すごく優しい声。

オレの……好きな声だ。


――古都(こと)。


まただ。

また、声が聞こえる。

オレ、この声、知ってる。



――古都。



一生懸命オレを呼ぶ声は、すごく苦しそうだ。

この声は……。


幸(ゆき)?

オレは閉じていた目を開けた。

すると、視界は一気に暗闇から光が満ち溢れる世界へと変化した。


まぶしい。


「古都……」

オレが思ったとおり、やっぱり目の前にはあの、光り輝く星の瞳をした幸がいた。

アレ?

だけどオレ、なんで?

神楽(かぐら)のとこに、いたんじゃなかったか?



えっと……たしか、神楽から逃げる道の途中のど真ん中でぶっ倒れたんじゃなかったっけ?

あれ?

あれ?



オレは、意識を失う前の記憶をたどる。


だけどやっぱり、どうしてココに幸がいるのかが分からない。

それに、ココ……。


風通しのいい窓からは真っ白いカーテンがゆらゆら揺れている。

オレが今、いるのは、ふわふわのベッドの上。

ココは、幸の家。

ジメジメした神楽といた部屋じゃない。


「古都……逃げろ……」

オレの頭は疑問符ばかりだ。

そんなオレの耳元で、幸は額から細かな汗を流し、苦しそうに息をしている。





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