chapter:打ちのめされる現実 扉を蹴破る音と、獣が唸る声。 そして同時に、オレの身体が軽くなり、大きな物体が壁に激突する音を聞いた。 目をつむっていても、大きな何かがオレの前にいることが分かる。 なに? 目の前で、いったい何が起こっているの? 不思議に思ったオレは、そっと目を開けた。 「なっ!!」 目の前の光景を見た途端、オレは絶句する。 オレの目と鼻の先――そこには、大きな一匹の九尾の狐がいた。 身体の大きさは、狼くらいはあるだろう。 目の前に立ちはだかる妖狐は、妖狐と化した幸ほど大きくはないけれど、それでも十分と言えるほどの大きさだ。 その妖狐は、金色の毛をしている。 綺麗な毛並みだ。 この九尾って……もしかして……。 オレの頭に、ふと、ある人物の姿が過ぎる。 「古都、大丈夫か!?」 目を見張るオレの後ろから、オレを心配する声が聞こえた。 その声にも聞き覚えがあった。 声がする方へ振り向くと、そこには、人間でいう年齢なら、十八歳くらいの、オレよりも頭ひとつ分背の高い、黒髪の……朱(あや)兄ちゃんがいた。 つり上がった黒い目は、びっくりしているオレの顔を映し出している。 「よかった。古都、無事だったんだね」 またひとり、オレの上から声が落ちてきた。 新たな人物に反応して視線を上げると、長いまつ毛に包まれた優しい茶色い瞳と重なった。 |