迷える小狐に愛の手を。
第十七話





chapter:打ちのめされる現実





扉を蹴破る音と、獣が唸る声。

そして同時に、オレの身体が軽くなり、大きな物体が壁に激突する音を聞いた。


目をつむっていても、大きな何かがオレの前にいることが分かる。


なに?

目の前で、いったい何が起こっているの?


不思議に思ったオレは、そっと目を開けた。

「なっ!!」

目の前の光景を見た途端、オレは絶句する。

オレの目と鼻の先――そこには、大きな一匹の九尾の狐がいた。

身体の大きさは、狼くらいはあるだろう。

目の前に立ちはだかる妖狐は、妖狐と化した幸ほど大きくはないけれど、それでも十分と言えるほどの大きさだ。


その妖狐は、金色の毛をしている。
綺麗な毛並みだ。

この九尾って……もしかして……。

オレの頭に、ふと、ある人物の姿が過ぎる。


「古都、大丈夫か!?」


目を見張るオレの後ろから、オレを心配する声が聞こえた。

その声にも聞き覚えがあった。


声がする方へ振り向くと、そこには、人間でいう年齢なら、十八歳くらいの、オレよりも頭ひとつ分背の高い、黒髪の……朱(あや)兄ちゃんがいた。

つり上がった黒い目は、びっくりしているオレの顔を映し出している。


「よかった。古都、無事だったんだね」

またひとり、オレの上から声が落ちてきた。

新たな人物に反応して視線を上げると、長いまつ毛に包まれた優しい茶色い瞳と重なった。





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