chapter:怒り狂う闇-side:神楽 『逃げられた』 言いようのない失望感が俺を覆う。 ギシッ。 重力に抵抗するのも面倒で、古都を縛っていたベッドに腰を下ろした。 そうすると分かるのは、俺の股間が古都を求めて膨らんでいるということだ。 俺自身を締めつけるデニムが忌々(いまいま)しい。 無残に引き千切られたロープを、視界の端に入れれば、堪えがたい屈辱と怒りが込みあげてくる。 ベッドの上には、古都がいたという証ともいえる、彼の先走りが水たまりのように存在していた。 ――ああ、古都。 お前はどこまでも俺を追い詰めていくんだな……。 いいだろう。 お前の居場所は知っている。 どうせ、あの動物病院だろう。 奴が、ここから古都を連れ去ったんだ。 たかが人間ごときが俺に刃向うとは!! 古都、覚悟するがいい。 どう足掻(あが)こうと、お前は俺を受け入れる運命なんだよ。 「古都…………」 俺はベッドの上に点々と存在する先走りに顔を近づけた。 臭みのある、独特の匂いが俺の鼻をつく。 舌先を伸ばし、古都が流した先走りを舐める。 すると、伴侶でしか嗅ぎ分けることができない、古都が放つ、甘い香りが口の中に広がった。 この液が欲しい。 俺を魅了する甘いこの味。 俺を締めつける古都が欲しい。 俺は自身を締めつけているデニムのジッパーを下ろし、戒(いまし)めを解いた。 |