迷える小狐に愛の手を。
第十八話





chapter:怒り狂う闇-side:神楽





『逃げられた』

言いようのない失望感が俺を覆う。



ギシッ。
重力に抵抗するのも面倒で、古都を縛っていたベッドに腰を下ろした。


そうすると分かるのは、俺の股間が古都を求めて膨らんでいるということだ。

俺自身を締めつけるデニムが忌々(いまいま)しい。

無残に引き千切られたロープを、視界の端に入れれば、堪えがたい屈辱と怒りが込みあげてくる。


ベッドの上には、古都がいたという証ともいえる、彼の先走りが水たまりのように存在していた。


――ああ、古都。

お前はどこまでも俺を追い詰めていくんだな……。



いいだろう。

お前の居場所は知っている。

どうせ、あの動物病院だろう。

奴が、ここから古都を連れ去ったんだ。

たかが人間ごときが俺に刃向うとは!!

古都、覚悟するがいい。

どう足掻(あが)こうと、お前は俺を受け入れる運命なんだよ。


「古都…………」

俺はベッドの上に点々と存在する先走りに顔を近づけた。

臭みのある、独特の匂いが俺の鼻をつく。

舌先を伸ばし、古都が流した先走りを舐める。

すると、伴侶でしか嗅ぎ分けることができない、古都が放つ、甘い香りが口の中に広がった。


この液が欲しい。

俺を魅了する甘いこの味。

俺を締めつける古都が欲しい。


俺は自身を締めつけているデニムのジッパーを下ろし、戒(いまし)めを解いた。





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