迷える小狐に愛の手を。
第十八話





chapter:怒り狂う闇-side:神楽







「馬鹿(ばか)な……」

俺は開けっ広げになっている閑散(かんさん)とした部屋にひとり、立ち尽くしていた。


部屋には何もない。

本来、いるはずのモノがないんだ。


古都(こと)……逃げたのか。

細い身体をロープで雁字搦(がんじがら)めに縛り上げ、性的興奮を煽(あお)る媚薬剤をありったけ塗った。

しかも、俺を受け入れるための穴には、人間が作った男根と同じ形態をした、『ローター』というものを加えさせた状態で、だ。

それに、ローターからの刺激をさらに受けるようにと古都自身の根元まで縛り、解放を拒ませた。

俺を欲しがるよう、逃げられないよう、仕向けた。

それなのに……。


古都はおそらく、自身の白濁を流せば、とてつもない解放感が生まれ、そのおかげでしばらくの間は動けなくなることを理解したのだろう。

根本を縛られ、後ろにローターを咥えたまま、逃げたんだ。


そんな状態で動くのは自殺同然の行為だ。


いや、しかし。

古都はいったいどうやって逃げたというんだ?

両手足は逃げられないよう、しっかりとロープで固定した。


逃げようにも逃げることなど出来る筈(はず)がない。


それなのに、古都は逃げた。

あの、先走りを垂れ流したままの、淫猥な身体で……。


たった独りで逃亡を図れるわけはない。

誰かが古都の逃げる手助けをしたんだ。


くそっ。

せっかく古都を抱けると思ったのに……。






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