迷える小狐に愛の手を。
第一話





chapter:大きな傷を抱えて。





ふんわり、浮いたんだ。

「大丈夫? 痛かったね。怖がらせてしまって、ごめんね」

『っ!!」』

その声に目を開ければ、穏やかに微笑むソイツの姿があったんだ……。

そうやって、男は、オレの頭をまた、さっきと同じように撫ではじめる。


……なんなんだよ、調子狂う。

オレはお前に噛みついたんだぞ?

しかも、痛いのはオレじゃなくて、お前じゃん。

それなのに、コイツはオレを心配して撫でてくるし……。


なあ、お前は神楽の仲間じゃないのか?



オレはここへきてはじめて、目の前のソイツにクンクンと鼻を鳴らした。

匂いを嗅げば、オレたち妖狐族とは違う肌の匂いがあった。

どこかクセのある、歯の奥がギュってなる匂いと――。

あたたかな……母さんの隣にいるような匂いがした。

そしてオレは、コイツが人間なんだって気がついたんだ。



神楽の手先じゃない?


だけど、いくら神楽の手先じゃないっていっても、コイツを簡単に信用するわけにはいかない。

だって、オレの父さんはいつも言っていたんだ。

『人間は無力な分、いろんな物をつくって獲物を捕る』んだって。

『頭がかしこいから、近づく時は用心しなさい』って。


だけど、オレは、頭を撫でられて悪い気はしない。

……仕方がないから、もう少しだけ撫でさせてやるよ。


オレはうっすらと目を閉じて、頭を撫でられる感触を味わっていた。





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