chapter:お日さまを失った日。 扉に巻きつけた鎖をもう一回確認して、ひとつうなずくと、苦しんでいる幸の方へと向かった。 ゆっくり足音を立てず、近づいたはずなのに、幸を起こしてしまった。 ギロリ。 金色の瞳がオレを睨(にら)んだ。 『殺してやる』 まるで、そう言っているみたいだ。 ――今、幸を怖くないって言えば嘘になる。 正直、すごく怖い。 目が合っただけでも身体は震えるし、心臓が鋭い刃物で刺されたように息ができなくなる。 だけど……。 オレを殺せば、幸は楽になる。 ――いや、ちがう。 楽になんてならない。 妖狐としての幸は楽になるけれど、人間としての幸は苦しいままだ。 だって幸はもう、妖狐になってしまった。 人間の幸じゃない。 家族にも会えないし、好きな人にも……加奈子(かなこ)にも会えないんだ。 しかも、幸は人としての魂を失った。 「ごめん。ごめんな……幸……」 オレは、罪悪感に苛(さいな)まれながら、幸を縛りつけている鎖を解いていく……。 幸から放たれる妖気は恐ろしいほど部屋の中に充満しはじめている。 オレの体内に流れる血は、幸の妖気を感じて逆流をはじめるようだ。 恐怖で身体が凍りつく……。 ひとつ、ふたつと足枷を外していくオレを、幸はただ睨みをきかせて見つめている。 きっと、オレを殺す機会を窺っているんだ。 |