chapter:お日さまを失った日。 ……それでもいい。 オレが死ぬことによって、幸が解放されるなら、それでも構わない。 オレは押し寄せてくる恐怖を振り切るため、首を左右に振ると、最後の足枷へと手を伸ばした。 ガシャンッ。 四つ目の鎖は冷たい音を立て、地面に落ちる。 その瞬間だった。 今まで沈黙を守っていた幸は口の両端にある鋭い犬歯を見せ、オレを押し倒した。 「っぐ……」 四本の足に備わっている鋭い爪が、オレの胸を突き刺す。 幸の鋭い犬歯が、紅兄ちゃんに着せてもらった白い着物を貫通し、身体に埋め込んでいく。 オレの身体に、また、新しい傷が生まれた。 傷口からは真っ赤な血が流れはじめ、真っ白な着物が赤く染まっていく……。 ギシャアアアアアッ!! 幸は大きな口を開け、オレに向けて威嚇(いかく)する。 周囲は刃物のような鋭い妖気が渦を巻き、グルグルと旋回(せんかい)していた。 「ごめん。幸……」 だけどなんでかな。 オレ、殺されるっていうのに、恐怖が次第に消えていく……。 幸につけられた胸の傷よりも、心が痛い。 ……ごめん。 謝っても謝りきれない。 オレは死を受け入れるため、幸の背中に腕を伸ばした。 その瞬間、幸は脅え、鋭い牙をオレの肩口へといっそう強く食い込ませた。 「あぐっ!!」 恐ろしいほどの激痛が身体中を走り抜ける。 |