迷える小狐に愛の手を。
第十九話





chapter:お日さまを失った日。





……それでもいい。

オレが死ぬことによって、幸が解放されるなら、それでも構わない。


オレは押し寄せてくる恐怖を振り切るため、首を左右に振ると、最後の足枷へと手を伸ばした。


ガシャンッ。

四つ目の鎖は冷たい音を立て、地面に落ちる。

その瞬間だった。

今まで沈黙を守っていた幸は口の両端にある鋭い犬歯を見せ、オレを押し倒した。


「っぐ……」

四本の足に備わっている鋭い爪が、オレの胸を突き刺す。

幸の鋭い犬歯が、紅兄ちゃんに着せてもらった白い着物を貫通し、身体に埋め込んでいく。

オレの身体に、また、新しい傷が生まれた。

傷口からは真っ赤な血が流れはじめ、真っ白な着物が赤く染まっていく……。


ギシャアアアアアッ!!


幸は大きな口を開け、オレに向けて威嚇(いかく)する。

周囲は刃物のような鋭い妖気が渦を巻き、グルグルと旋回(せんかい)していた。


「ごめん。幸……」


だけどなんでかな。
オレ、殺されるっていうのに、恐怖が次第に消えていく……。

幸につけられた胸の傷よりも、心が痛い。


……ごめん。


謝っても謝りきれない。

オレは死を受け入れるため、幸の背中に腕を伸ばした。

その瞬間、幸は脅え、鋭い牙をオレの肩口へといっそう強く食い込ませた。


「あぐっ!!」

恐ろしいほどの激痛が身体中を走り抜ける。





- 175 -

拍手

[*前] | [次#]
ページ:

しおりを挟む | しおり一覧
表紙へ

contents

lotus bloom