chapter:お日さまを失った日。 オレの命が危険だと、もたらされる激痛が教える。 鋭い牙で捕らわれた肩口からは、血が勢いよく吹き出した。 唸り声を上げながら、オレを噛み殺そうとする幸の力は恐ろしいくらいに強い。 痛覚は次第に消え失せ、頭の中が真っ白になっていく。 たくさんの『ごめん』を込めて幸に伸ばした手が、幸の頭部を包むことに成功した。 ふんわりとした幸の毛並みや、匂いは、もう分からない。 でもきっと幸は、妖狐になっても、ひだまりのようなあたたかさは一緒なんだろうな。 「ごめん。ごめんな、ゆき。オレが神楽から逃げた所為で、幸の意識を殺してしまった。幸はただ、苦しむオレを救おうとしただけなんだよな。 ……それなのに、オレは人間だった幸を殺してしまった。 ほんと……ごめんな……」 ……スルリ。 目尻から耳に向かって、一筋の涙が流れはじめる。 この涙は、傷が痛いからとか、苦しいからとかじゃない。 幸を想っての涙だ。 幸ならいい。 幸が……せめて楽に生きていけるなら、オレの命なんていらない。 オレの命は、幸が助けてくれたもの。 もらったものを返すだけ。 ただ、それだけだ。 オレは抵抗ひとつせず、そっと目を閉じた。 瞼(まぶた)の裏では、目を細めて笑う幸の顔が見える。 『大丈夫だよ』 『古都は、かわいいね』 オレを包んでくれた幸。 |