迷える小狐に愛の手を。
第二十話





chapter:報われない想いを抱き……。





「さ、飯でも作るぞ。まだ何も腹に入れてないからな。安心したら腹が減ってきた」


「あ、飯!!俺も手伝う!!」

朱兄ちゃんは『飯』と聞いて、腰を上げる暁兄ちゃんに続いて立ち上がり、ふたりは寝室から出て行った。


妖狐は、強力な力を持つがゆえ、食欲旺盛(しょくよくおうせい)な体質なんだ。

その食欲をオレが削ぎ落としてしまっていたことに、今さらながらに気がついた。


たくさん心配かけちゃったんだ。


兄ちゃん、ごめんなさい。

そして、ありがとう。

キッチンへと向かう、兄ちゃんふたりの背中を見つめながら、オレは心の中で感謝した。


「それにしても……人間が妖狐の本能を超えるとはね……正直、驚いたよ」

紅兄ちゃんの視線は隣にあるベッドに向けられていた。

オレも紅兄ちゃんに続いて、チラリとベッドを見れば、妖狐の姿をした幸がまだ眠っていた。

すごく疲れたんだろう。


紅兄ちゃんが言ったとおり、人間が妖力を駆使して自我を取り戻すなんて、聞いたことがない。

簡単にできることじゃないことを、幸はやってのけたんだ。


「古都がとても大切なんだね」

「えっ?」


紅兄ちゃんの言葉が、オレの想像していなかったものだったから、びっくりした。


「うん? あ、だってね。妖力は人間の心を蝕み、意志を支配する強力なものだよ? そんな強力なものをねじ伏せようとするのは、なかなか出来ることではない。

強固な妖力には強力な意志が最も必要になるからね」





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