chapter:報われない想いを抱き……。 「さ、飯でも作るぞ。まだ何も腹に入れてないからな。安心したら腹が減ってきた」 「あ、飯!!俺も手伝う!!」 朱兄ちゃんは『飯』と聞いて、腰を上げる暁兄ちゃんに続いて立ち上がり、ふたりは寝室から出て行った。 妖狐は、強力な力を持つがゆえ、食欲旺盛(しょくよくおうせい)な体質なんだ。 その食欲をオレが削ぎ落としてしまっていたことに、今さらながらに気がついた。 たくさん心配かけちゃったんだ。 兄ちゃん、ごめんなさい。 そして、ありがとう。 キッチンへと向かう、兄ちゃんふたりの背中を見つめながら、オレは心の中で感謝した。 「それにしても……人間が妖狐の本能を超えるとはね……正直、驚いたよ」 紅兄ちゃんの視線は隣にあるベッドに向けられていた。 オレも紅兄ちゃんに続いて、チラリとベッドを見れば、妖狐の姿をした幸がまだ眠っていた。 すごく疲れたんだろう。 紅兄ちゃんが言ったとおり、人間が妖力を駆使して自我を取り戻すなんて、聞いたことがない。 簡単にできることじゃないことを、幸はやってのけたんだ。 「古都がとても大切なんだね」 「えっ?」 紅兄ちゃんの言葉が、オレの想像していなかったものだったから、びっくりした。 「うん? あ、だってね。妖力は人間の心を蝕み、意志を支配する強力なものだよ? そんな強力なものをねじ伏せようとするのは、なかなか出来ることではない。 強固な妖力には強力な意志が最も必要になるからね」 |