chapter:報われない想いを抱き……。 紅兄ちゃんは、そう言うと、にっこりと微笑んだ。 ――紅兄ちゃんはそう言うけれど、違うことは知っている。 幸はオレを嫌っている。 だって……だってオレは幸に避けられたんだから。 「違うよ」 「古都?」 「幸はオレを避けるくらい、嫌っているんだ」 あらためて口にすれば、涙が溢(あふ)れてくる。 チクンッ。 胸の奥が針で刺されたみたいに痛んだ。 せっかく紅兄ちゃんが傷の手当てをしてくれたっていうのに、ほっぺたを伝う涙で、また傷口が濡れてしまう。 「幸には……好きな人がいるから」 幸が好きなのは、オレじゃない人。 かわいらしい女性。 優しい、幸に似た人。 その人は幸のことを想い、幸もきっと……彼女を好いている。 「古都は……幸さんのことが好きなんだね」 好き。 「うん。好き……でも……この想いは抱えちゃいけないものなんだ……。オレは妖狐で、幸は……人間だった」 その幸の人生を、オレが奪ってしまった。 無理やり、妖狐にさせてしまった。 「好きになっちゃいけなかったのに……っふぇっ」 言ったとたん、オレの口から嗚咽が漏れた。 また新たな涙が目から流れ、ほっぺたにある傷口に染みる。 「古都、わたしはね。好きになってはいけないことなんて、この世の中にあるとは思わないな」 泣いてしまったオレの頭を、紅兄ちゃんが優しく撫でてくれる。 |