迷える小狐に愛の手を。
第二十話





chapter:報われない想いを抱き……。





紅兄ちゃんは、そう言うと、にっこりと微笑んだ。


――紅兄ちゃんはそう言うけれど、違うことは知っている。


幸はオレを嫌っている。

だって……だってオレは幸に避けられたんだから。


「違うよ」

「古都?」


「幸はオレを避けるくらい、嫌っているんだ」

あらためて口にすれば、涙が溢(あふ)れてくる。


チクンッ。

胸の奥が針で刺されたみたいに痛んだ。


せっかく紅兄ちゃんが傷の手当てをしてくれたっていうのに、ほっぺたを伝う涙で、また傷口が濡れてしまう。


「幸には……好きな人がいるから」


幸が好きなのは、オレじゃない人。

かわいらしい女性。
優しい、幸に似た人。

その人は幸のことを想い、幸もきっと……彼女を好いている。


「古都は……幸さんのことが好きなんだね」

好き。


「うん。好き……でも……この想いは抱えちゃいけないものなんだ……。オレは妖狐で、幸は……人間だった」

その幸の人生を、オレが奪ってしまった。

無理やり、妖狐にさせてしまった。

「好きになっちゃいけなかったのに……っふぇっ」

言ったとたん、オレの口から嗚咽が漏れた。

また新たな涙が目から流れ、ほっぺたにある傷口に染みる。


「古都、わたしはね。好きになってはいけないことなんて、この世の中にあるとは思わないな」


泣いてしまったオレの頭を、紅兄ちゃんが優しく撫でてくれる。





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