迷える小狐に愛の手を。
第二十二話





chapter:決意







神楽(かぐら)が放つ、刺すような恐ろしい妖気を追って足を進めれば、目の前には廃墟のような古びた建物ばかりがある場所が広がっていた。

ツンとした鉄の匂いがオレの鼻を刺激する。


ねっとりとした空気が、白い着物からはみ出ている肌に絡みつく。

目の前には、錆(さ)びた鉄板やらが、侵入者を拒もうとしているかのように倒れていた。


オレを阻む鉄を掻(か)い潜(くぐ)り、視界がひらけたかと思えば、建物の中心部分に大きな柱が見えた。


神楽はまだ姿を現さない。


ひらけすぎた視界を警戒して、いつでも神楽と交戦できるように身構えながら、前進していく。

どうやらオレは建物の中心に辿り着いたらしい。

細い身体を雁字搦(がんじがら)めにされて、柱に縛りつけられていた加奈子(かなこ)を見つけた。


「加奈子!!」


よかった無事だった。


ほっとひと安心して近づくオレに気がついた加奈子は、布で猿ぐつわを噛まされ、話せない代わりに、ブンブンと首を横に振っている。

こっちに来るなと、そう言いたいんだろう。

身の危険も顧(かえり)みず、他人のオレを心配をする。

そんな彼女だからこそ、幸(ゆき)は好きになったんだ。


「待ってて、すぐに外すから」

オレは加奈子が一生懸命首を振るのも構わず、まずは口元を覆っている猿ぐつわから解いてやった。





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