迷える小狐に愛の手を。
第二十二話





chapter:決意





「古都(こと)くん、早く逃げて!! 彼がいるの!!」

「うん、知ってる。でも、大丈夫だ。加奈子には、もう指一本触れさせないから」


オレは加奈子に安心してもらうため、そう伝えると、猿ぐつわに続いて手首から腰にかけて、きつく縛っている紐を解いた。


紐は、加奈子を捉えていたわりには軽い音を立てて地面に落ちる。


「さあ、幸が待ってるから、すぐ逃げて」

「鏡(かがみ)さんが?」


「うん。加奈子を待ってる」

にっこり微笑み、目から流れる恐怖の涙をそっと拭ってやる。


「そうはいかないよ、古都」

鋭い声は突然、オレのすぐ背後から聞こえた。


――ああ、やっぱり奴はこの場所で待ち構えていたのか。


「神楽!!」


オレは加奈子を背中に回して、敵意むき出しの神楽を見据えた。



「古都、よくも俺を侮辱(ぶじょく)してくれたね」


……一歩。
また一歩と、ゆっくりオレとの距離を詰めてくる神楽はまるで、脅える獲物を、楽しんで捕獲しようとしている獣のようだ。


「古都、お前を匿(かくま)った人間をどこへやった」

「幸は、ココにはいない!!」

「――と、なると、この小娘は、存外役には立たなかったということか……」

神楽の言葉に、加奈子の身体が大きく震えた。

きっと加奈子は、幸にとって自分はそこまでの価値はないのだと思ったんだろう。





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