chapter:決意 「古都(こと)くん、早く逃げて!! 彼がいるの!!」 「うん、知ってる。でも、大丈夫だ。加奈子には、もう指一本触れさせないから」 オレは加奈子に安心してもらうため、そう伝えると、猿ぐつわに続いて手首から腰にかけて、きつく縛っている紐を解いた。 紐は、加奈子を捉えていたわりには軽い音を立てて地面に落ちる。 「さあ、幸が待ってるから、すぐ逃げて」 「鏡(かがみ)さんが?」 「うん。加奈子を待ってる」 にっこり微笑み、目から流れる恐怖の涙をそっと拭ってやる。 「そうはいかないよ、古都」 鋭い声は突然、オレのすぐ背後から聞こえた。 ――ああ、やっぱり奴はこの場所で待ち構えていたのか。 「神楽!!」 オレは加奈子を背中に回して、敵意むき出しの神楽を見据えた。 「古都、よくも俺を侮辱(ぶじょく)してくれたね」 ……一歩。 また一歩と、ゆっくりオレとの距離を詰めてくる神楽はまるで、脅える獲物を、楽しんで捕獲しようとしている獣のようだ。 「古都、お前を匿(かくま)った人間をどこへやった」 「幸は、ココにはいない!!」 「――と、なると、この小娘は、存外役には立たなかったということか……」 神楽の言葉に、加奈子の身体が大きく震えた。 きっと加奈子は、幸にとって自分はそこまでの価値はないのだと思ったんだろう。 |