chapter:大きな傷を抱えて。 毛並みはいいに越したことないんだけどさ。 人間の姿になったら女と間違われるし、たまったもんじゃない。 オレだって立派な妖狐族の男なんだ。 そんなオレも、父さんの強力な妖力を受け継いでいる……んだけど、自分では力を制御できない。 だから妖狐としての力を使わず、だけど最小の妖力を持って人型になるんだ。 そんなわけで、自分の力を上手く使えないオレは、力を欲しがる奴らの格好の餌食になる。 オレの力を狙ってくる奴は多い。 オレの幼馴染みの神楽もそのひとりだ。 だからそんなオレを父さんはいつも警戒して側にいてくれた。 守ってくれていたんだ。 なのに……神楽はここ数年間でもくもくと力をつけはじめ、父さんの妖力も超えたんだ。 力ある者はさらにその上の力を欲しがる。 神楽はオレに目をつけ、力を奪おうとした。 妖力の力の奪い方は簡単だ。 身体を繋げればいい……。 だから神楽はオレを襲った。 昔はさ、とても優しい奴だった。 オレといつもツルんで遊んでいたんだ。 父さんも母さんも、まさか神楽が牙をむけるなんて信じられなかっただろう。 それは一瞬の出来事だった。 オレたち妖狐は成人を迎えると、単独行動をしてお嫁さんを連れ帰る。 だから他の妖狐もそうやってオレたちから離れて行った。 オレの家族は、本当は兄さんが3人いるんだ。 |