chapter:大きな傷を抱えて。 オレは末っ子。 みんな離れ離れになった。 父さんと一緒にいることになったのは、母さんとオレと神楽だけ……。 神楽の父さんと母さんは、オレと神楽が6歳の時、人間に殺されてしまった。 それからはずっとオレと一緒に育ってきた。 まさか、神楽がオレの妖力を狙っていたなんて思わなかった。 それに……。 神楽は言ったんだ。 オレを嫁にするって……。 オレは神楽にとって、そういうふうにしか見られていなかったんだ。 そう思うとすごく悲しくなったし、父さんと母さんを殺したことが許せない。 ずっと仲間だと思っていたのに……。 「どうしようか……。なんて呼べばいい?」 真正面から見つめてくる幸。 なんて呼べばいい……って言われてもなあ。 オレはただただ黙ったまま、幸を見つめ返す。 「お前は綺麗な目をしているね。それに気品がある。『古くから受け継がれた尊い都』で、古都(こと)っていうのはどうかな?」 目を細めて微笑む幸。 オレはドキっとした。 だって、それが正真正銘、オレの名前なんだ。 なんで、出会ったばかりの幸が、オレの名前を知ってるんだろう。 ああ、だけどもう、親しげにオレの名前を呼んでくれる存在がいなくなってしまった。 父さん、母さん…………。 オレ……ひとりぼっちになっちゃった……。 最後に見た、真っ白い雪の中で真っ赤な血を流したふたりの姿が頭から離れない。 |