迷える小狐に愛の手を。
第二十三話





chapter:妖狐族の王







「古都(こと)、無事か?」

幸(ゆき)の後に続いたのは、暁(あかつき)兄ちゃん、紅(くれない)兄ちゃん、朱(あや)兄ちゃんたちだった。


兄ちゃんたちは人型のまま、神楽と向かい合っている。



みんな、来てくれたんだ……。


「人間の分際で、なぜ古都の妖力を抱えて人型になっているのかは知らんが、丁度いい。探す手間がはぶけた。殺してやる」



神楽は右手を広げ、分散した妖力を一点に集中させた。すると、ほどなくして細長い剣が出現する。

神楽は剣を握りしめ、目の前に立ちはだかる幸へと走り込んだ。


「やだっ!! 幸!!」

幸が神楽に殺されてしまう。

神楽の剣技は恐ろしいほど的確で、しかも素早い。

その神楽が、ほんの少し前まで人間だった幸に攻撃するんだ。戦う前から結果なんてもう見えている。

「幸!!」

「古都、彼なら大丈夫だ」

心配するオレの隣では、いつの間に近づいたのか、紅兄ちゃんがいた。


紅兄ちゃんは素早くオレの襟元を引き寄せ、あらわになっている肌を隠すと、慣れた手つきで帯で結んでくれた。


「ああ。彼は、まるではじめから妖力を扱えたような素晴らしい戦闘センスを持っている」

今度は暁兄ちゃんが紅兄ちゃんに続いてうなずいた。

「暁兄ちゃん、でもっ!!」

「ま、見てろって。幸は強えぇよ」

朱兄ちゃんは、口元に不敵な笑みを浮かべた。





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