迷える小狐に愛の手を。
第二十三話





chapter:妖狐族の王





「朱兄ちゃん……」

オレは、側に駆け寄ってくれた兄ちゃんたちから、また幸へと視線を移し、固唾を飲んで戦いの行く末を見つめる。


本当に?

兄ちゃんたちが言うように、幸は本当に大丈夫なのか?



オレは神楽に傷つけられた痛む拳を胸の前でそっと握りしめた。


たしかに、向かい来る神楽を見据えた幸は、堂々としているように思う。

でも、神楽は父さんと母さんを倒した。妖力は恐ろしいほど強いはずだ。いくら妖力に打ち勝ったとはいえ、そんなに早く力を使いこなせるようになるとは思わない。


……幸。

心配するオレをよそに、神楽が目と鼻の先で止まると、幸は目を閉じ、拳を突きつけた。


「何のマネだ?」

口角を上げてニヤリと笑う神楽は明らかに馬鹿にしている。

たかが人間が、強力な妖狐の力を使いこなせるわけがない。
妖力が身体を乗っ取らなかったのもきっと、何かの間違いだ。

神楽の表情のすべてが、そう告げていた。


オレも正直、いくら兄ちゃんたちのお墨付きがあるからといって、妖気を手に入れたばかりの幸が神楽と渡り合えるとは思わない。

だけど、それは違ったんだ――……。


幸は、全身から妖力を漲(みなぎ)らせ、神楽と同じように差し出した右の拳に妖力を集めた。

するとその瞬間、幸の身体がぶれた。

恐ろしいほどの妖気が身体を包み込んだかと思うと、周囲を取り囲む妖力は消え失せ、代わりにあらわれたのは、腰まである、水色に近い銀の髪をした、透明な肌の青年だった。





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