迷える小狐に愛の手を。
第二十三話





chapter:妖狐族の王





一見すると、見たことのない、綺麗な青年。


その青年が幸だと分かったのは、幸が着ていた着物と同じ着物を身に着けていたからだ。


人間だった頃の漆黒の瞳は、今は金色に輝いている。

だけど、星のような輝きは前と変わらない。


幸は……完全にオレの妖力を使いこなせていた。


その幸が手にしているのは、銀色に輝く、両刃の剣だ。


「くそっ、人間の分際が!!」

神楽は目の前で静かに佇(たたず)む幸に、明らかに脅えを見せていた。

その証拠に、神楽の進む足は止まり、平然と立つ幸と向き合っている。

神楽が脅えるのもうなずける。


だって、幸の放つ妖気は暴れまわったりはしないけれど、膨張している。

ここの空気に触れた肌が、静電気に触れたみたいにビリビリする。


そんな幸へと、神楽は止めた足をふたたび前進すると、ものすごい速さで幸の懐(ふところ)に入った。

同時に、鋭い切っ先がぶつかり合う、冷たい金属音が空気中に分散し、響き渡る。


ぶつかったのは剣だけじゃない。神楽と幸を取り巻く妖気も、だ。


ぶつかり合う剣と妖気に反応し、空気の振動がオレたちの身体に響く。


「す、すげぇ」


ゴクン。

オレの側で唾を飲んだのは朱兄ちゃんだ。

暁兄ちゃんと紅兄ちゃんの顔もチラリと見れば、ほっぺたにひと筋の汗を流していた。

朱兄ちゃんはともかく、いつも冷静な暁兄ちゃんと紅兄ちゃんが表情を変えるのは今まで見たことがない。





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