chapter:妖狐族の王 ……そっか、良かった。 自分の危険を顧(かえり)みず、オレの心配までしてくれる加奈子はやっぱり優しい。 そんな加奈子は、この戦いが終わって、幸が自分の元へと戻ってくれるのを信じて待っている。 優しい加奈子と幸は、誰がどう見てもお似合いだ。 ……ツキン。 幸と加奈子のことを認めると、オレの目から涙がまた出てくる。 戦っている神楽と幸が、ぼやけていく。 だけど、今はそんなことを考えている場合じゃない。 オレは乱暴に目を擦(こす)り、滲(にじ)む視界を取り除いた。 「くっそおおおお!!」 何度斬り込んでも攻撃を受け止められる。神楽は焦っている。その証拠に、妖気が乱れていた。 おかげで攻撃が鈍っている。 それを知っている幸は、手にしていた剣を下方向から一気に振り上げ、神楽の剣を弾き飛ばした。 神楽の持っていた剣は、鈍い音を立てて、後ろに転がった。 その隙を突き、幸は神楽の喉元に切っ先を向ける。 神楽は、死を覚悟したんだろう。 地面に両膝を着き、目を閉じた。 それは、幸が勝利した瞬間だった。 「殺せ……。人間に負け、無様な姿をさらしたんだ」 幸は無言のまま、刃を振り上げる。 幸は神楽を殺す気だ。 「っ、ダメ! 幸!!」 オレは、神楽を葬(ほうむ)り去ろうとする幸を止めるため、痛む身体を動かした。 幸の方へ走る。 |