迷える小狐に愛の手を。
第二十三話





chapter:妖狐族の王





これで、みんな、誰ひとり命を失わずにすむんだ。


オレは、ほっと胸を撫で下ろした。

緊迫した空気が消えていく……。

すると、オレたちの周りに、金色の毛並みをした、たくさんの妖狐たちがオレたちを囲むようにしてあらわれた。

妖狐たちは、天に向かって吠えている。

それは幸が、次の妖狐族の王になった事を示していた。


幸が新しい主。

妖狐族の王。


幸が、人間と妖狐族の架け橋をするんだ。


これから、きっと、いい世界になる。

そう確信したオレは、幸を囲むみんなと一緒に、力強い主を見つめた。


ただ、ひとりを除いては……。


幸の背後で突然、ソレは動いた。


みんなは、頼もしい主に視線を注ぎ、気付いていない。



『ソレ』はゆっくり立ち上がると、後ろに落ちた剣を掴む。

そして、素早く後ろを向いている幸へと切っ先を向ける。


だめだっ!

「幸っ!!」

オレの声とほぼ同時――殺気を感じた幸は、すぐさま振り返った。


だけど、だめだ。間に合わない。

切っ先は恐ろしい速度をもって、振り向く幸の腹へと突き進む。



幸が殺される!!


そう思った直後、オレの足は、意志とは関係なく、勝手に動いた。

オレは幸の前に立ちはだかり、両手を広げる。


……ズブッ。


肉を切り裂く鈍い音が、やけに大きく聞こえた気がした。





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