chapter:妖狐族の王 これで、みんな、誰ひとり命を失わずにすむんだ。 オレは、ほっと胸を撫で下ろした。 緊迫した空気が消えていく……。 すると、オレたちの周りに、金色の毛並みをした、たくさんの妖狐たちがオレたちを囲むようにしてあらわれた。 妖狐たちは、天に向かって吠えている。 それは幸が、次の妖狐族の王になった事を示していた。 幸が新しい主。 妖狐族の王。 幸が、人間と妖狐族の架け橋をするんだ。 これから、きっと、いい世界になる。 そう確信したオレは、幸を囲むみんなと一緒に、力強い主を見つめた。 ただ、ひとりを除いては……。 幸の背後で突然、ソレは動いた。 みんなは、頼もしい主に視線を注ぎ、気付いていない。 『ソレ』はゆっくり立ち上がると、後ろに落ちた剣を掴む。 そして、素早く後ろを向いている幸へと切っ先を向ける。 だめだっ! 「幸っ!!」 オレの声とほぼ同時――殺気を感じた幸は、すぐさま振り返った。 だけど、だめだ。間に合わない。 切っ先は恐ろしい速度をもって、振り向く幸の腹へと突き進む。 幸が殺される!! そう思った直後、オレの足は、意志とは関係なく、勝手に動いた。 オレは幸の前に立ちはだかり、両手を広げる。 ……ズブッ。 肉を切り裂く鈍い音が、やけに大きく聞こえた気がした。 |