迷える小狐に愛の手を。
第二十四話





chapter:「ありがとう」と「さようなら」をキミに。







体内を巡っていた血液が、傷つけられたオレの腹から大量に流れ出ていく……。

「古都!!」


オレの背後で、幸が息を飲む音と、兄ちゃんたちが、オレを呼ぶ声がする。

オレの膝は力を失い、地面に着くと、同時に腹からは、鈍い音を生みながら、神楽の剣が抜けた。

たくさんの血液が、まるで勢いよく流れる滝のように、オレの腹から出て行く。

だけど、オレの身体はもう、痛みさえも感じなかった。


倒れる!


そう思ったら、幸はオレをすぐに抱きかかえてくれた。


幸の顔越しに神楽を見ると、苦しそうに顔を歪めていた。


「ああ、うそだ……」

頭を抱えて立ち尽くす神楽を、兄ちゃんたちが取り押さえ、身動きできないようにしている。

「古都、古都!!」

オレを呼ぶのは、優しい人の声――。


あったかい。

幸の腕の中……。


『大丈夫だよ。どうか、悲しまないで』


気持ちを込めて、にっこり微笑んでみせる。


うまく笑えているといいんだけれど……。


でも、失敗したかも。だって幸の眉間には、深い皺(しわ)が刻まれている。

星の輝きをした綺麗な瞳は、小粒の雨を降らせてくる。

ゆき、泣いてくれているんだ……。


「古都!! なぜ……なぜ庇った!!」


なぜ?

そんなこと、今さら?


そんなの、決まってる。

オレが、幸を好きだから。

幸を、死なせたくないって思ったからだ。





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