chapter:「ありがとう」と「さようなら」をキミに。 体内を巡っていた血液が、傷つけられたオレの腹から大量に流れ出ていく……。 「古都!!」 オレの背後で、幸が息を飲む音と、兄ちゃんたちが、オレを呼ぶ声がする。 オレの膝は力を失い、地面に着くと、同時に腹からは、鈍い音を生みながら、神楽の剣が抜けた。 たくさんの血液が、まるで勢いよく流れる滝のように、オレの腹から出て行く。 だけど、オレの身体はもう、痛みさえも感じなかった。 倒れる! そう思ったら、幸はオレをすぐに抱きかかえてくれた。 幸の顔越しに神楽を見ると、苦しそうに顔を歪めていた。 「ああ、うそだ……」 頭を抱えて立ち尽くす神楽を、兄ちゃんたちが取り押さえ、身動きできないようにしている。 「古都、古都!!」 オレを呼ぶのは、優しい人の声――。 あったかい。 幸の腕の中……。 『大丈夫だよ。どうか、悲しまないで』 気持ちを込めて、にっこり微笑んでみせる。 うまく笑えているといいんだけれど……。 でも、失敗したかも。だって幸の眉間には、深い皺(しわ)が刻まれている。 星の輝きをした綺麗な瞳は、小粒の雨を降らせてくる。 ゆき、泣いてくれているんだ……。 「古都!! なぜ……なぜ庇った!!」 なぜ? そんなこと、今さら? そんなの、決まってる。 オレが、幸を好きだから。 幸を、死なせたくないって思ったからだ。 |