chapter:「ありがとう」と「さようなら」をキミに。 だけど、オレは幸の問いには答えず、代わりに、違う言葉を吐き出す。 「よかった。ゆき、ぶじで……」 「古都!!」 「ねぇ、ゆき……しあわせに……なって……?」 加奈子とふたりで仲良く生きてね。 「オレ……ずっとみてるね……ゆきが……しあわせなの……ずっと……みてる……」 「古都!! ダメだ、逝(い)くな!! 待ってろ、今、今傷を治してやる」 幸は、妖力を溜めた右手で、今もドクドクと絶えず流れ続けている真っ赤に染まった傷口を抑えた。 でも……もう、いいよ。 もう、いいんだ。 どうせ叶わないこの想い。 どこにいたって、生きていたって、幸を想うことしかできないこの心――。 だったら、父さんと母さんがいるところで、幸を見守る方がずっといい。 オレは血液が回りきらなくなった手を伸ばし、幸のほっぺたにそっと触れる。 その手を、幸はそっと包んでくれた。 だけど……。 感触、もうなくなっちゃった。 幸に触れても、もう分からないや……。 「ゆ、き…………」 オレは最後の力を振り絞って、ゆっくり身体を起こす。 「こ…………と?」 「すき……」 オレの唇が、幸の唇に、そっと触れる。 もう、感覚さえもないっていうのに、ヘンだね。 ほんの一瞬だけだったけれど、幸と重ねた唇は、優しい、雨の味がした。 できるなら、このまま幸の腕に抱かれていたい。 |