迷える小狐に愛の手を。
最終話





chapter:想い遙かに、忍ぶ恋







……ツツゥ。

目尻から、耳に向かって流れる雫を感じて、オレはふと、目を開けた。

視界に飛び込んできたのは、真っ白い空間。

あたたかな……優しい、お日さまの光が差し込む世界だった。


……えっと…………。

ココ……どこ?


オレの視線の先には、お日さまと同じくらい真っ白い壁と天井がある。

光が差し込む窓には、レースのカーテンがぶら下がっている。

カーテンは、窓から入ってくるそよ風に撫でられ、さらさらと揺れていた。

とても穏やかな場所。


ココ、知っている。

オレが寝ている、このふわふわした感触も、知っている。


ココは……。

「古都(こと)くん、気が付いたの? 古都くんが目を覚ましました!!」


えっ?

加奈子(かなこ)?

視線を巡らせていると、突然オレの耳元で、甲高い張りのある、元気のいい、女の子の声が聞こえた。

反射的にベッドから身体を起こせば……。


「っぐ!!」

身体中に激痛が走った。



加奈子の走り出すけたたましい足音が消えたかと思ったら、ほどなくしてすぐ、真っ白い部屋に備え付けられている茶色い扉が開いた。


「古都!! 無茶はいけない」

ふいに伸びてきた力強い腕は、あまりの激痛で傾くオレの身体を受け止め、またふかふかのベッドに押し戻す。


伸びてきた腕から視線を上げると、そこには、星の輝きをした瞳の……彼がいた。


「……幸(ゆき)?」





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