chapter:想い遙かに、忍ぶ恋 「ありがと……」 オレは心にもない礼を、加奈子に告げる。 ああ、オレ。 戻って来ちゃったんだ……。 どうして、あの暗闇の中に留まらなかったんだろう。 どうして、ココに戻って来てしまったんだろう。 だけどその答えは簡単だ。 幸に、もう一度会いたいと思ったからだ。 なんだよ。 土壇場(どたんば)になって死にたくないって……。 往生際が悪いっていうか……。 諦めが悪いっていうか……。 ほんと、つくづく自分がイヤになる。 「古都?」 黙り込んでしまったオレに対して、幸は身体が痛み出したのかと思ったらしい。 幸の顔が間近に迫る。 幸が心配してくれている。 オレが好きな、星の輝きをした黒い瞳がオレを映し出す。 ……トクン。 幸と目が合ったっていう、たったそれだけのこと。 だけど、たったそれだけで、オレの胸は大きく高鳴る。 ああ、だけどオレ、失恋決定なんだよな。 オレって、なんて恥ずかしいヤツなんだろう。 最後の最後に幸に告白して、キスまでして、死ねないって何だよ、それ。 そういえば……。 神楽(かぐら)はどうしたんだろう? 神楽は幸を殺そうとしたけど、間合いに入ったオレが殺されかけて……。 神楽、泣いていたっけ……。 「暁兄ちゃん……神楽は?」 |