迷える小狐に愛の手を。
第二話





chapter:癒えない傷







チュンチュンと鳴く、鳥のさえずりがオレの意識を呼び覚ました。

そっと目を開けると、飛び込んでくるのは明るい真っ白なお日さまの光。

そして……。



誰!?

目の前には知らない顔が、『でんっ』とあった。


閉じた瞼(まぶた)にくっついている睫毛(まつげ)は長くて、鼻筋が通っている端正な顔立ちをしたソイツ。


あれ?
だけど、この顔、どっかで見たことがあるような気がする……。



身体を起こせば、さわり心地のいい、ふんわりとした足場があった。


ツキリと後ろ足が痛むけど、その足場のおかげで前足に体重を難なくかけることができるから、そこまで後ろ足に負担をかけることはない。


傷ついた後ろ足を見ていると、自分の身に降りかかった惨劇を思い出すんだ。

幼馴染みだった神楽が裏切り、父さんと母さんを殺して、しかもオレを襲ったという出来事を……。


そして、目の前のコイツは『幸(ゆき)』っていう名前で、理由は知らないけれど、傷ついたオレを介抱してくれているっていうこと。



……チラ。

視線をもう少し後ろにもっていくと、幸の手首が見えた。

その手首には、オレが噛みついたところに包帯が巻いてあった。

ものすごく痛そうだ……。

…………………。

……って、悪いなんて思わないからな!!


幸をぜんぶ信用したわけじゃないし、人間なんて裏切るだけだって父さん言ってたし!!





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