chapter:癒えない傷 チュンチュンと鳴く、鳥のさえずりがオレの意識を呼び覚ました。 そっと目を開けると、飛び込んでくるのは明るい真っ白なお日さまの光。 そして……。 誰!? 目の前には知らない顔が、『でんっ』とあった。 閉じた瞼(まぶた)にくっついている睫毛(まつげ)は長くて、鼻筋が通っている端正な顔立ちをしたソイツ。 あれ? だけど、この顔、どっかで見たことがあるような気がする……。 身体を起こせば、さわり心地のいい、ふんわりとした足場があった。 ツキリと後ろ足が痛むけど、その足場のおかげで前足に体重を難なくかけることができるから、そこまで後ろ足に負担をかけることはない。 傷ついた後ろ足を見ていると、自分の身に降りかかった惨劇を思い出すんだ。 幼馴染みだった神楽が裏切り、父さんと母さんを殺して、しかもオレを襲ったという出来事を……。 そして、目の前のコイツは『幸(ゆき)』っていう名前で、理由は知らないけれど、傷ついたオレを介抱してくれているっていうこと。 ……チラ。 視線をもう少し後ろにもっていくと、幸の手首が見えた。 その手首には、オレが噛みついたところに包帯が巻いてあった。 ものすごく痛そうだ……。 …………………。 ……って、悪いなんて思わないからな!! 幸をぜんぶ信用したわけじゃないし、人間なんて裏切るだけだって父さん言ってたし!! |