chapter:癒えない傷 自分で言うのもなんだけど、オレってば、けっこう毛並みがいい。 傷が治ったら誰かに売られる可能性だってある。 まあ、傷が治るまではココにいてやってもいいけどな。 行くあてなんかないし、敵がわんさかいる外より、敵は少ない方がいい。 オレは、規則正しく寝息を立てている幸の顔を横目で確認すると、立ちはだかるようにして存在する、傷ついた腕を跨いで、『幸』という囲いから出た。 ほんわかした足元が途切れたところまでやって来ると、そこで足場は終わっていた。 ゆっくり見下ろせば、固そうなツルンとした地面は遥か先にあった。 仮に、オレがココから飛び降りたとしよう。 そうしたら、ケガをしているオレの足は、すごく痛むだろう。 だけど、このまま大人しくココにいても仕方がない。 だってオレ、ココがどこかも分からないんだ。 だからオレは、ココがどこなのかを知るために、ゴクリと唾を飲みこんで、前かがみになると、勢いよく足場を蹴った。 ぴっきーーーーん。 いってぇ!!!!! 足が地面に着いた瞬間、やっぱりというか、案の定というか、傷つきすぎている足が痛みを訴えた。 ドサッ。 無様な音を立てて、地面に横たわる。 「ギャンッ!!」 痛てえっ! ものすげぇ痛い。 オレが想像していたよりもずっと痛いっ!! いや、痛いっていうどころじゃない。 もう、ほんとに死んじゃうんじゃないかっていうくらいの激痛がオレを襲う。 |