chapter:想い遙かに、忍ぶ恋 「ね? 多分、俺は古都の香りに吸い寄せられたんだと思う。君が近くにいると、嗅覚からはじまって、視覚、聴覚、最後は感覚が俺の中を支配していった。おかげで、可愛らしい君が欲しくてたまらなかった」 オレが……幸を誘惑していた? だから幸は、オレを無理やり抱かないよう、避けていたの? 幸は……オレを……嫌っていない? オレ、むしろ好かれていたの? 心の中で、何回繰り返しても、まだ幸の言葉が信じられない。 幸が言っていることが本当なのかどうかを探るため、ジッと目を見つめてみる。 そうしたら、幸は苦笑して、言葉を続けた。 「同性にこんな気持ちを抱く俺はおかしいのかもしれない。だが、それも古都が相手なら、当然だと思っている自分がいるんだ。 仕事で雪山に行った、あの時――傷ついた君をはじめて見た時は、守ってあげなければと思った。 それはまあ、いつもの事というか、ただの職業病というか……そういうものだと思っていた。だが、家に連れ帰って言葉を交わすうち、君が人の言葉を理解しているんじゃないかって思ってしまってね、そこからかな。おかしな保護欲が出てしまったんだ。 だけど俺は愚かにも、その保護欲の正体にはまだ気がつかなかった。 それに気がついたのは、古都がはじめて人間になった時かな。古都が自分自身を守るため、ドーベルマンと対峙していた時――身体の傷はまだ完治していないのに、ドーベルマンと戦おうと、君は必死に暴れていたね」 |