chapter:想い遙かに、忍ぶ恋 「怖かったんだ……。オレ……誰でもそういうふうに思われるのかって……。 神楽だけじゃなくって、みんな……。 人間も、妖狐の仲間たちも、みんなこういう目でオレを見るのかって、そう思ったら、怖かった」 ドーベルマンに襲われた当初を思い出し、うつむくと、幸はオレの頭をそっと撫でてくれた。 ……あたたかい。 紅兄ちゃんとは違う、力強い手の感触がオレの冷たく凍りついた心を溶かしてくれる。 オレはそっと目を閉じて、頭に乗った幸の手の感触を楽しむ。 オレの目に溜まった涙は、いつの間にか止まり、代わりに口からは笑みが溢れた。 「古都、俺はね。こうやって傷ついた君をこの手で守り、優しく包みたいと、そう思うようになっていたんだ」 「ゆき……」 幸は、クスリとひとつ笑うと、また話を続ける。 「古都が発情期を迎えた時、はじめは古都をなんとかしてあげたいという、ただ助けたい気持ちばかりが多かった。 それなのに、気がつけば、俺の手を求めて喘(あえ)ぐ君を欲していた。 大きい目に涙を溜めて、頬を赤く染め、俺の名を呼ぶ君の口を塞いでしまいたい。そういう感情が出はじめていることを知った」 口を塞ぐ……? あ……オレもだ……。 「幸、オレもね……はじめて発情期になったあの時、幸にキスして欲しいって思ったの……っふ」 閉じた目を開けて幸を見ると、オレの口が、また軽く塞がれた。 |