迷える小狐に愛の手を。
第二話





chapter:癒えない傷





痛みを訴えている傷ついた方の足を見ると、白い包帯が赤く染まっている。


せっかく出血が止まっていたっていうのに、また流れはじめた。


だけど、自分を責めている暇なんてない。

とにかくすっげぇ痛い。


「え? あ、何やってるんだ!?」

地面でのた打ち回っていると、上の方で声が聞こえた。

幸が起きたんだ。

――というより、起こした……が正しい表現だけどな。


「落ちちゃったんだね。痛かったね、ごめんね」

そう言うと、幸はオレをひょいっと抱え上げた。

「また傷がひらいた……」


幸は、眉間に皺を寄せて、まるでオレと同じように痛がっているようだった。

コイツ、バッカじゃねぇ?


落ちたんじゃなくってオレが自分から飛び降りたんだよ。

別にお前が悲しい顔する必要なんてないし、謝る必要もない。

それなのに、幸は自分の失態だと責めている。

なんなんだよ、調子狂う。


幸はオレを売り飛ばす気なんだろ?

だったらそんなに心配する必要ないじゃん。

眉根を寄せてさ……。

……ったっく、ああ、もうわかったよ。

オレが悪かったって!!



眉を寄せて謝る幸に、オレは謝罪の意味を込めて、ほっぺたをすり寄せた。


すると、幸はオレにとって、禁句を投下してきた。


「古都(こと)はかわいいね……」


目を細めて微笑む幸。


『かわいい』

……って、冗談じゃない。

オレはカッコよくなりたいの!!




『かわいい』という言葉が癪(しゃく)にさわったオレは、幸の腕から逃れようと、身を捩(よじ)る。





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