迷える小狐に愛の手を。
第二話





chapter:癒えない傷





うるさい!!

幸はオレを気遣うフリして、オレを殺す気だろ!!
その手には乗るかっ!


ガリッツ!!

「っく!!」

伸ばした幸の手はオレの鋭い爪の餌食になる。

その手は……包帯が巻いてあった方の手だ。

昨日、オレが噛みついたり、引っ掻いたりした方の手。

恐ろしく痛みを伴うはずなのに、だけど幸は一瞬、苦痛の表情をしたかと思うと、また手を伸ばしてきた。


何度やってきたって同じことだ。

ガリッツ。

「フーーーーーーッ!!」

オレはまた爪を立て、伸ばしてきた幸の腕を引っ掻く。


幸の手から、じんわりと赤い血が流れる。


ぽたり。


ぽたり。


傷口から溢れる血は、オレの目の前で流れ続けて、ほわほわした白い地面に滴り落ちる。

その鮮血は、少しずつ大きな輪っかを描いて、足場に染み渡っていく。


目の前に広がるのは――……。



真っ白い雪の上に広がる鮮血。

その上に力なく横たわるのは……。



父さんと母さんの赤く染まった姿――……。



……イヤだ。
イヤだイヤだイヤだイヤだ!!

父さん、母さん。

なんでオレを置いて逝(い)ったの?

ひとりはイヤだ。
悲しいよ。



今の状況は、まるっきり、父さんと母さんを失った時と同じもので、オレの記憶を鮮明に蘇らせてくる。


ふわり。

「っつ!!」

独りよがりになっている時だった。





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