chapter:ひとりと一匹の奇妙な関係 痛みと戦うオレに、幸が言い聞かせるようにして話す。 ぴっくぅぅ。 サケだとぉぉぉおおお? 痛みを伴う慣れない行為にビクつくオレは、幸の、『サケ』に耳を立ててしまう。 オレの態度が変わったことを知った幸は、にっこりと微笑んだ。 幸が言った、『サケ』というのは無論、綺麗な川で泳ぐ、キラキラした鱗を持つアレのことだ。 何を隠そう、オレはその魚が大好物だったりする。 それはココへ来て、はじめて、『消毒剤』を意識がある時に塗られたその日。 幸はオレの目の前にそいつを置いたんだ。 あの紅色の……魚を!! オレは何の迷いもなく、紅色をした、『ヤツ』を口に運んだ。 それはものすごい勢いで。 その日からかな? 幸はオレの好物を知ったんだ。 それで、こうやってオレの好物を獲物に、『消毒』という地獄を味わうことになるんだけど……。 「さ、どうする? 古都?」 っくぅぅぅ……仕方ない。 大人しくしてやる。 オレはもがく足を止めて、大人しくチョコンと座った。 観念したオレの姿を見た幸は、お日さまのような、まん丸な瞳を強調させ、マジマジと見つめてきた。 ちくしょう、やるなら早くしろよ!! こっちはすんげぇ痛いのを覚悟で座ってるんだ!! 内心急かしていると、幸はオレの決意を理解したのか、『消毒剤』を染み込ませた布を傷口に当ててきた。 チョン。 ……っくぅ。 |