迷える小狐に愛の手を。
第三話





chapter:ひとりと一匹の奇妙な関係





痛みと戦うオレに、幸が言い聞かせるようにして話す。


ぴっくぅぅ。

サケだとぉぉぉおおお?

痛みを伴う慣れない行為にビクつくオレは、幸の、『サケ』に耳を立ててしまう。


オレの態度が変わったことを知った幸は、にっこりと微笑んだ。

幸が言った、『サケ』というのは無論、綺麗な川で泳ぐ、キラキラした鱗を持つアレのことだ。

何を隠そう、オレはその魚が大好物だったりする。


それはココへ来て、はじめて、『消毒剤』を意識がある時に塗られたその日。

幸はオレの目の前にそいつを置いたんだ。


あの紅色の……魚を!!

オレは何の迷いもなく、紅色をした、『ヤツ』を口に運んだ。

それはものすごい勢いで。



その日からかな?

幸はオレの好物を知ったんだ。

それで、こうやってオレの好物を獲物に、『消毒』という地獄を味わうことになるんだけど……。


「さ、どうする? 古都?」


っくぅぅぅ……仕方ない。

大人しくしてやる。


オレはもがく足を止めて、大人しくチョコンと座った。

観念したオレの姿を見た幸は、お日さまのような、まん丸な瞳を強調させ、マジマジと見つめてきた。



ちくしょう、やるなら早くしろよ!!

こっちはすんげぇ痛いのを覚悟で座ってるんだ!!


内心急かしていると、幸はオレの決意を理解したのか、『消毒剤』を染み込ませた布を傷口に当ててきた。


チョン。
……っくぅ。





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