迷える小狐に愛の手を。
第三話





chapter:ひとりと一匹の奇妙な関係





――数段ある階段を下りると、すぐに大きな調理場だ。

そこは、『ダイニングキッチン』というものだと、父さんから聞いたことがある。


なんでも、人間はココで、色々な食材を使って、調理をするらしい。

人間の食べ方は様々で、焼いたり、蒸したり、揚げたりするらしい。

よくは知らないけど。

そんなオレの心情を知らない幸は、ほわほわした四角い小さな布の上にオレを下ろした。

「少し待っていてね」


それから幸は、オレの頭をひと撫ですると、サケを入れている箱に向かった。




「はい、どうぞ」

目の前に出されたのは、平たい容器の上に乗った紅色の魚。

こんがり焼き色がついている。

オレとしては、生の方がうまいし好きなんだけど、「お腹をこわすといけないからね」と幸はわざわざ焼く。

まあ、同じサケだからいいけどな。
細かいことは言わないさ。

サケを目の前にしたオレは、大きく口を開けて、さっそく口に運ぶ。


その隣で、幸は椅子に座って、オレと同じサケを食っていた。

すると、コンコン、と、ドアをノックする音が耳の端っこで聞こえた。

オレは耳を傾けながらも、目の前のご馳走にガッつく。



「どうぞ」

幸は、ノックした相手が誰だか分かったようで、食べ物を口に運ぶのを中断して、振り返った。



「あの……鏡先生」

控えめに入って来たのは、この病院の受付係、神崎 加奈子(かんざき かなこ)。


白い肌をしたひょろっこい彼女は大学生で、『あるばいと』として、ここの仕事を手伝っているらしい。





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