chapter:ひとりと一匹の奇妙な関係 ――数段ある階段を下りると、すぐに大きな調理場だ。 そこは、『ダイニングキッチン』というものだと、父さんから聞いたことがある。 なんでも、人間はココで、色々な食材を使って、調理をするらしい。 人間の食べ方は様々で、焼いたり、蒸したり、揚げたりするらしい。 よくは知らないけど。 そんなオレの心情を知らない幸は、ほわほわした四角い小さな布の上にオレを下ろした。 「少し待っていてね」 それから幸は、オレの頭をひと撫ですると、サケを入れている箱に向かった。 「はい、どうぞ」 目の前に出されたのは、平たい容器の上に乗った紅色の魚。 こんがり焼き色がついている。 オレとしては、生の方がうまいし好きなんだけど、「お腹をこわすといけないからね」と幸はわざわざ焼く。 まあ、同じサケだからいいけどな。 細かいことは言わないさ。 サケを目の前にしたオレは、大きく口を開けて、さっそく口に運ぶ。 その隣で、幸は椅子に座って、オレと同じサケを食っていた。 すると、コンコン、と、ドアをノックする音が耳の端っこで聞こえた。 オレは耳を傾けながらも、目の前のご馳走にガッつく。 「どうぞ」 幸は、ノックした相手が誰だか分かったようで、食べ物を口に運ぶのを中断して、振り返った。 「あの……鏡先生」 控えめに入って来たのは、この病院の受付係、神崎 加奈子(かんざき かなこ)。 白い肌をしたひょろっこい彼女は大学生で、『あるばいと』として、ここの仕事を手伝っているらしい。 |