chapter:『いっぴき』と『いっぴき』 バッターンッ!! 「ニャアアア!!」 「ああ、リンちゃんや」 「加奈子(かなこ)ちゃん、そっちに行ったよ!!」 「はいっ!!」 バタン、ガシャンッ!! 「ニャアアアアアッ!!」 窓から入ってくる太陽のまっ白い光が部屋全体を照らし、オレの丸まった背中をあたためてくれる。 時刻は昼を迎えようとしている頃――。 三階のベッドの上で居眠りをしているオレの耳に、けたたましい音が聞こえた。 おかげで、うつらうつらと眠りに入っていたオレの意識が覚醒する。 「ギシャアアッ!!」 「うわっ!」 「きゃーっ!! 鏡(かがみ)さん!!」 「ああ、リンや。静かにしておくれ」 バッタン!! ドッシン!! けたたましい音と猫の鳴き声。 幸(ゆき)と、それに加奈子と……。 聞いたことのない老婦人の声が、一階にある動物病院から聞こえていた。 オレは、どっこいしょと重い腰を上げて、山の頂上でもいるように思わせてくる高いベッドから、地面を見下ろした。 そこには、狐の姿をしているオレよりもひと回り大きくて、柔らかいブルーのクッションがある。 これは幸が用意してくれたもので、オレがよくベッドから抜け出そうとして飛び降りていたから、傷が悪化しないようにと敷いてくれたものだ。 なにしろ、オレがベッドから飛び降りるたび、傷が広がり、幸は、なかなか治らないと嘆いていたからな。 |