迷える小狐に愛の手を。
第四話





chapter:『いっぴき』と『いっぴき』







バッターンッ!!

「ニャアアア!!」

「ああ、リンちゃんや」

「加奈子(かなこ)ちゃん、そっちに行ったよ!!」

「はいっ!!」


バタン、ガシャンッ!!


「ニャアアアアアッ!!」




窓から入ってくる太陽のまっ白い光が部屋全体を照らし、オレの丸まった背中をあたためてくれる。


時刻は昼を迎えようとしている頃――。

三階のベッドの上で居眠りをしているオレの耳に、けたたましい音が聞こえた。

おかげで、うつらうつらと眠りに入っていたオレの意識が覚醒する。


「ギシャアアッ!!」

「うわっ!」

「きゃーっ!! 鏡(かがみ)さん!!」

「ああ、リンや。静かにしておくれ」


バッタン!!
ドッシン!!

けたたましい音と猫の鳴き声。

幸(ゆき)と、それに加奈子と……。

聞いたことのない老婦人の声が、一階にある動物病院から聞こえていた。



オレは、どっこいしょと重い腰を上げて、山の頂上でもいるように思わせてくる高いベッドから、地面を見下ろした。


そこには、狐の姿をしているオレよりもひと回り大きくて、柔らかいブルーのクッションがある。


これは幸が用意してくれたもので、オレがよくベッドから抜け出そうとして飛び降りていたから、傷が悪化しないようにと敷いてくれたものだ。

なにしろ、オレがベッドから飛び降りるたび、傷が広がり、幸は、なかなか治らないと嘆いていたからな。





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