迷える小狐に愛の手を。
第四話





chapter:『いっぴき』と『いっぴき』





どうやら猫は、オレの言葉を少しは聞き入れる気になったようだ。


説得するなら今しかない。

オレはすかさず、話を続けた。


『オレの足をここまで回復させてくれたのは、ココにいる医者と受付係なんだぜ?
それにさ、お前をここに連れてきてくれた老人はすげぇ優しそうじゃん?
もし、お前を痛めつける気があるなら、とっくの昔にそうしてるんじゃないか?

実は、ココにお前を運ぶのだって、『金』っていうものが必要みたいなんだ』


『金』のことはよく分かんねぇ。

だけど、人間は紙きれを大切そうに持っているからな。
それで欲しい物を手に入れたり、手放したりするらしい。


『なぁ、その腹、治してもらえよ。大丈夫だって、オレもそうやって治してもらってるところなんだからよ』


オレがそう言うと、猫は目をスッと細め、何かを考えるようにしてから、コクンと、うなずいた。


それを見たオレは、幸の側まで行くと、彼の袖を口でグイグイ引っ張った。


「古都?」



幸は目を丸くさせると、大人しくベッドの上で鎮座している猫を見る。



「リンちゃん!! ああ、狐ちゃん。貴方はすごく頭がいいのね。リンちゃんを説得してくれたの」

老婦人は目に涙を浮かべ、オレと、大人しくなった猫を交互に見てそう言った。



「古都、ありがとう」


幸は、袖を引っ張られていない方の手で、オレの頭をひと撫ですると、猫と向き合った。



『あ、痛いけど我慢するんだぞ?』





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