chapter:『いっぴき』と『いっぴき』 どうやら猫は、オレの言葉を少しは聞き入れる気になったようだ。 説得するなら今しかない。 オレはすかさず、話を続けた。 『オレの足をここまで回復させてくれたのは、ココにいる医者と受付係なんだぜ? それにさ、お前をここに連れてきてくれた老人はすげぇ優しそうじゃん? もし、お前を痛めつける気があるなら、とっくの昔にそうしてるんじゃないか? 実は、ココにお前を運ぶのだって、『金』っていうものが必要みたいなんだ』 『金』のことはよく分かんねぇ。 だけど、人間は紙きれを大切そうに持っているからな。 それで欲しい物を手に入れたり、手放したりするらしい。 『なぁ、その腹、治してもらえよ。大丈夫だって、オレもそうやって治してもらってるところなんだからよ』 オレがそう言うと、猫は目をスッと細め、何かを考えるようにしてから、コクンと、うなずいた。 それを見たオレは、幸の側まで行くと、彼の袖を口でグイグイ引っ張った。 「古都?」 幸は目を丸くさせると、大人しくベッドの上で鎮座している猫を見る。 「リンちゃん!! ああ、狐ちゃん。貴方はすごく頭がいいのね。リンちゃんを説得してくれたの」 老婦人は目に涙を浮かべ、オレと、大人しくなった猫を交互に見てそう言った。 「古都、ありがとう」 幸は、袖を引っ張られていない方の手で、オレの頭をひと撫ですると、猫と向き合った。 『あ、痛いけど我慢するんだぞ?』 |