迷える小狐に愛の手を。
第五話





chapter:恋ってなに?







その日から、幸(ゆき)と受付係の加奈子(かなこ)は、オレの扱い方を変えた。


一階にある動物病院の受付カウンターの上――。

幸はそこに、オレがいつでも来られるようにと、等身大のカゴを用意して、中にはふかふかの布を入れてくれた。

室内の換気も行き届いているし、見晴らしがいいそこは、オレにとって、第二の定位置になったんだ。





「あ、きつねちゃんだ。かわい〜」

オレが受付カウンターにいると、人間の子供はそう言ってオレの頭を撫でる。


オレは……といえば、頭を撫でられるのは、別に嫌いじゃない。

ココに来た当初の、人間嫌いもそこまでなくなっていた。

人間は、イヤな奴ばかりじゃないと、人間に対する価値観が大分変わりつつあった。




――こんな生活も悪くはないのかもしれない。




考えをあらためはじめていた、そんな時だ。


突然、刺すような視線を感じたオレは、閉じていた目を開け、何気ないふうを装って、チラリと視線のする方向へと目を向けた。

すると、オレの目の前には、大きなドーベルマンが鼻息を立ててオレを見ていた。


『なぁ、お前すごいな!!』

ドーベルマンとほんの一瞬目が合うと、奴が話しかけてきた。

オレは素知らぬふりをして、ふたたび目を閉じる。


するとドーベルマンは、オレの耳に鼻を近づけて、クンクン匂いを嗅いできた。


なんだ、コイツ!





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