chapter:恋ってなに? その日から、幸(ゆき)と受付係の加奈子(かなこ)は、オレの扱い方を変えた。 一階にある動物病院の受付カウンターの上――。 幸はそこに、オレがいつでも来られるようにと、等身大のカゴを用意して、中にはふかふかの布を入れてくれた。 室内の換気も行き届いているし、見晴らしがいいそこは、オレにとって、第二の定位置になったんだ。 「あ、きつねちゃんだ。かわい〜」 オレが受付カウンターにいると、人間の子供はそう言ってオレの頭を撫でる。 オレは……といえば、頭を撫でられるのは、別に嫌いじゃない。 ココに来た当初の、人間嫌いもそこまでなくなっていた。 人間は、イヤな奴ばかりじゃないと、人間に対する価値観が大分変わりつつあった。 ――こんな生活も悪くはないのかもしれない。 考えをあらためはじめていた、そんな時だ。 突然、刺すような視線を感じたオレは、閉じていた目を開け、何気ないふうを装って、チラリと視線のする方向へと目を向けた。 すると、オレの目の前には、大きなドーベルマンが鼻息を立ててオレを見ていた。 『なぁ、お前すごいな!!』 ドーベルマンとほんの一瞬目が合うと、奴が話しかけてきた。 オレは素知らぬふりをして、ふたたび目を閉じる。 するとドーベルマンは、オレの耳に鼻を近づけて、クンクン匂いを嗅いできた。 なんだ、コイツ! |