迷える小狐に愛の手を。
第五話





chapter:恋ってなに?





失礼極まりない奴だなっ!!


オレよりもひと回りもふた回りもでかいドーベルマンを、ギロリと睨(にら)む。


だけど、今のオレは妖力を失った妖狐。

ただの小さな狐にすぎない。


ドーベルマンは臆することなく、オレを見つめてくる。



『あのさ、俺。お前に惚(ほ)れた!!』





はあ?


輝く目を大きくさせて告白してきたドーベルマンに、オレは目玉をひん剥(む)いた。


開いた口が塞(ふさ)がらないっていうのは、まさにこのことだ。

絶句するオレを畳み掛けるようにして、ドーベルマンは続きを話す。


『昨日、暴れまくる猫を宥(なだ)めていただろう?』


「…………」

ああ、そういえば、そういうこともあったっけ?

あの時は、せっかく気持ちよく眠ってたのに起こされて、ちょっとイラってきたんだっけ……。


すんげぇ眠かったから、仕方なく、暴れる猫を説得してやったんだ。


ほんとにアレはもう、最悪だった。

眠たかったのに起こされてさ……。


昨日の出来事を思い出し、オレは顔をしかめた。


だけど、オレの心情をまったく知らないドーベルマンは、目を大きく見ひらいて、キラキラと輝かせている。

その雰囲気は、まるでオレを崇拝しているかのようだ。




『その姿がさ、すんげぇカッコよかったんだ。男の中の男っていうか……。な、俺の彼女になって!!』


ハアハアと息を荒げて話すドーベルマンに、オレはタジタジだ。





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