chapter:恋ってなに? オレは、幸の手を避けるようにして、膝から降りるとすぐに、その場を後にした。 オレが向かう先は、三階のベッドだ。 その後ろからは、ほっと息をつき、椅子の背にもたれる幸の姿と、オレを追いかけてくる加奈子の姿が見えた。 嫌な気持ちになっている所為(せい)で、早くこの場から去りたいと思ったオレは、数段にもわたる階段をタンタンッと勢いよく駆け上る。 あと三段ほど階段を上れば、ふかふかのベッドがオレを待っている。 ――気を抜いたその時だ。 あまりの腹立たしさに、足が言うことを訊かなくなった。 階段を、踏み外してしまった。 落ちる!! そう思っていたけど、オレの身体は、後ろから続いてくる加奈子の手によって受け止められた。 柔らかい加奈子の手に包まれたオレは、身を委(ゆだ)ねる。 幸とは違う優しい香りに包まれ、荒れた気分は、少しだけ穏やかになる。 だけど、やっぱり胸がズキズキする。 こんな感情は知らなくて、戸惑ってしまう。 ほどなくして、オレの身体は柔らかい布の上にゆっくり落とされた。 ……ポタッ。 大粒の水滴が、オレの頭目がけて降ってきた。 雨か? いやいや、ここはでっかい屋根のついた家の中だ。雨なんて落ちてこない。 それに、窓の外では太陽の光がさんさんと降り注いでいる。 じゃあ、ポツン、ポツンと上から降ってくる、『コレ』は、なに? |