迷える小狐に愛の手を。
第五話





chapter:恋ってなに?





オレは、幸の手を避けるようにして、膝から降りるとすぐに、その場を後にした。

オレが向かう先は、三階のベッドだ。

その後ろからは、ほっと息をつき、椅子の背にもたれる幸の姿と、オレを追いかけてくる加奈子の姿が見えた。


嫌な気持ちになっている所為(せい)で、早くこの場から去りたいと思ったオレは、数段にもわたる階段をタンタンッと勢いよく駆け上る。


あと三段ほど階段を上れば、ふかふかのベッドがオレを待っている。


――気を抜いたその時だ。

あまりの腹立たしさに、足が言うことを訊かなくなった。

階段を、踏み外してしまった。




落ちる!!

そう思っていたけど、オレの身体は、後ろから続いてくる加奈子の手によって受け止められた。

柔らかい加奈子の手に包まれたオレは、身を委(ゆだ)ねる。


幸とは違う優しい香りに包まれ、荒れた気分は、少しだけ穏やかになる。

だけど、やっぱり胸がズキズキする。

こんな感情は知らなくて、戸惑ってしまう。

ほどなくして、オレの身体は柔らかい布の上にゆっくり落とされた。



……ポタッ。

大粒の水滴が、オレの頭目がけて降ってきた。

雨か?

いやいや、ここはでっかい屋根のついた家の中だ。雨なんて落ちてこない。

それに、窓の外では太陽の光がさんさんと降り注いでいる。


じゃあ、ポツン、ポツンと上から降ってくる、『コレ』は、なに?





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