chapter:恋ってなに? 見上げれば、加奈子が――大きな目に涙を浮かべて、泣いていた。 「やっぱり……わたしじゃ、ダメなのかな。先生は、こんな子供なんて相手にしないのかな……」 加奈子がそう言うと、オレの頭にはまた、ピチャリと音を立てて、大粒の雫が落ちてきた。 オレはいったいどうしたらいいんだ? 困惑したまま、彼女の傍らでうつむいた。 ポタッ。 ポタッ。 ピチャッ。 いくら時間が経っても、加奈子の涙は止まらない。 おかげで、オレの頭はびしょ濡れだ。 ……なんでだろう。 止まることのない涙を流している加奈子を見ていると、オレもなんだか悲しくなった。 オレは泣いている加奈子の腕に、顔をすり寄せる。 すると、黙っていた加奈子は、嗚咽(おえつ)が入り交じった声で話しはじめた。 「一目惚れだったの」 ひとめぼれ? 「その時、ちょうど大学の学校帰りだった。 動物に笑顔で話しかけている鏡(かがみ)先生を見た時、一目惚れしたの。 どうやったら先生に近づけるのかと思って、毎日毎日、ここの前を通っていたら、偶然、受付のアルバイトを募集している張り紙を見つけたの。 これは運命だって思った。 実際、鏡先生の傍にいると、あたたかくて、近づけば近づくほど、どんどん好きになっていった……」 ……あたたか。 たしかにそうだ。 幸は、どんなにオレが牙を向けても、傷ついたオレをそっと抱きしめ、包んでくれる。 |