迷える小狐に愛の手を。
第五話





chapter:恋ってなに?





見上げれば、加奈子が――大きな目に涙を浮かべて、泣いていた。


「やっぱり……わたしじゃ、ダメなのかな。先生は、こんな子供なんて相手にしないのかな……」


加奈子がそう言うと、オレの頭にはまた、ピチャリと音を立てて、大粒の雫が落ちてきた。


オレはいったいどうしたらいいんだ?



困惑したまま、彼女の傍らでうつむいた。


ポタッ。



ポタッ。

ピチャッ。


いくら時間が経っても、加奈子の涙は止まらない。

おかげで、オレの頭はびしょ濡れだ。





……なんでだろう。

止まることのない涙を流している加奈子を見ていると、オレもなんだか悲しくなった。


オレは泣いている加奈子の腕に、顔をすり寄せる。


すると、黙っていた加奈子は、嗚咽(おえつ)が入り交じった声で話しはじめた。




「一目惚れだったの」

ひとめぼれ?



「その時、ちょうど大学の学校帰りだった。
動物に笑顔で話しかけている鏡(かがみ)先生を見た時、一目惚れしたの。

どうやったら先生に近づけるのかと思って、毎日毎日、ここの前を通っていたら、偶然、受付のアルバイトを募集している張り紙を見つけたの。

これは運命だって思った。

実際、鏡先生の傍にいると、あたたかくて、近づけば近づくほど、どんどん好きになっていった……」




……あたたか。

たしかにそうだ。

幸は、どんなにオレが牙を向けても、傷ついたオレをそっと抱きしめ、包んでくれる。





- 49 -

拍手

[*前] | [次#]
ページ:

しおりを挟む | しおり一覧
表紙へ

contents

lotus bloom