chapter:蘇る苦痛と恐怖 ま、オレには関係ないけどな。 そっぽを向いて、また目を閉じると、意識の遠くから扉がゆっくり開く音が聞こえた。 どうせ一階の物音がここまで響いているんだろう。 そう思い、そのまま目を閉じていると――。 やっぱりおかしい。 オレを監視してるような、そんな視線を感じる。 伏せた顔を上げると……。 そこには忘れもしないドーベルマンの顔が、『でんっ』とあった。 『うわあああああっ!!』 オレはあまりにもびっくりしすぎて、ベッドから慌てて飛び起きる。 ドーベルマンから距離を置こうとすると、奴はあろうことかオレの身体の上に乗ってきたんだ。 『なんだよ!!』 オレの上に圧し掛かるドーベルマンを睨(にら)むと、奴は鼻息を荒くしていた。 『ずっと待ってたってのに、全然顔出さないから、こっちから来た』 気味悪く笑うドーベルマン。 んなっ!! 『お前、すげぇいい匂いするな』 ドーベルマンによって仰向けにされているオレの腹に、奴はあろうことか鼻をこすり付けてきた。 『なぁ、お前おかしいぞ? オレは男でお前も男だろう? こんなこと、間違ってる!!』 恐怖を必死に隠して説得を試みる。 だけど、ドーベルマンはその説得さえも応じない。 『男とかそんなの関係ないね。俺はたしかにお前に欲情してるんだ』 |