迷える小狐に愛の手を。
第六話





chapter:蘇る苦痛と恐怖





ドーベルマンは脅えたようにひと鳴きすると、奴は大きな音を立て、入り口の扉まで下がった。


いったい何が起こって、奴がオレから離れたのかは分からない。

だけど、今はそんなことを気にするよりも、ドーベルマンの自己中心的な考え方が許せなくて、オレは奴を睨んだ。

そうしたら、奴は逃げ場を失った虫のようにワタワタと無意味に身体を動かし、怯えた。

怯えるくらいなら、オレに手を出すんじゃねぇよっ!




……みんな。


みんな、オレの敵だ。

無理やり抱こうとした神楽も、このドーベルマンも……。

オレが助けを呼んでいるのに、コイツの飼い主とイチャイチャしてる幸も……。

みんな敵だ。

誰も、オレのことを助けてくれない。


オレに近づいてきた奴は、みんな敵なんだ。

そう思うと、腹立たしさが増す。

オレの心の中にドス黒い何かが生まれてくるのを感じた。



「どうした?」

階段を勢いよく駆け上ってこちらにやって来る複数の足音と一緒に幸の声が聞こえた。

たったひとつしかないこの部屋の扉が大きくひらく。


姿を現したのは白衣を着た幸と……。

この前、幸に言い寄っていた、露出度の高い女だった。

この女がドーベルマンの飼い主なんだと思えば、『なるほど』と心の奥底でうなずけた。

女の胸元を見れば、肩丸出しで、大きい胸全体がもう少しで露わになって見えそうなところまでずれ落ちていた。





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