迷える小狐に愛の手を。
第六話





chapter:蘇る苦痛と恐怖





怪我をしている足を見た瞬間、幸の目が大きくひらいた。



「君は……古都(こと)、なのか?」


唾を飲み、額に汗をにじませた幸は、そう言った。


「気安くオレの名前を呼ぶなっ!!」

オレは近くにあったクッションを手にして幸目がけて投げ放つ。

本来、投げることができないクッションを投げている。

だから、オレは今、人型になったんだと確信した。

投げたクッションは幸に命中するも、すぐに受け止められる。


クッションを軽々と受け止められたことにさえにも腹が立つ。

みんなオレを遊び道具のひとつとしか思っていないんだ。



なんだよそれ。

ふざけんなっ!!


オレは両端にある鋭い牙をむき、立ち竦(すく)む幸に近づくと、右手に拳をつくり、殴りかかる。

だけど、そんなオレの拳を、幸はクッションを受け止めた時のように、軽々と止めた。


「放せっ!!」


左手も右手同様に幸の顔面へと打ち込む。

だけど、それすらも簡単に掴まれてしまう。

幸の両手に取り押さえられたオレの両腕はびくともしない。

「放せ!! この……裏切り者!!」

「古都!! 何が裏切り者なのか教えて!!」



そんなことも分からないのか?

だから人間は愚かだって言うんだ!!


オレは幸の言葉には応えず、右足を腹部にお見舞いしようと膝を立てた。



ドサッ!

だけど攻撃はかなわず、オレの身体が幸によってベッドに倒された。





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