迷える小狐に愛の手を。
第六話





chapter:蘇る苦痛と恐怖





それは、さっきの出来事や、神楽に抱かれそうになった光景と繋がった。


「いやだ!! はなせ!! いやだあああああ!!」


ベッドに倒され、幸に覆われると、怒っていた心は一気に恐怖へと変化する。


身体中の血が引いていくような感覚に陥(おちい)った。

「いやだっ!!」

抑えつける幸からなんとか逃れようと、有り得ない方向に身体を捻(ね)じ曲げたりして、暴れまくる。

だけど――。

それさえも、幸によって取り押さえられた。



「いやああああああっ!!」

目の前が霞み、涙が溢れてくる。


父さん。
母さんっ!!



あの雪が降り積もる日の、あの時の感情が、オレを襲う。


『絶望』という二文字が、オレを地獄へと突き落す。

「いやああああっ!! 父さん!! 母さん!! いやあああああああああっ!!」

父さんと母さんを目の前で殺された、あの苦しみ――。

オレの身体を暴こうと、伸ばされる手――。


フラストレーションを起こしてしまったオレは、大口を開けて叫びまくる。


「古都、古都……大丈夫。俺は何もしない。だから、暴れないで。そんなに暴れると、せっかく治りかけている君の足がまた悪化するから……」


絶望の真っただ中にいるオレの耳元で、幸は、そっと、そう言ったんだ。

そうしたらさ、なんでかな。

オレの恐怖に染まった心が少し軽くなる。





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