迷える小狐に愛の手を。
第六話





chapter:蘇る苦痛と恐怖





目いっぱい動いていたオレの手足も次第に静かになっていった。



「大丈夫、何もしないよ……」

「……っつ!!」

幸は、冷たくなったオレの身体を抱きしめた。

「君は……古都なんだね」

少し身体を離し、オレの顔を自分の瞳に入れた幸の表情は、やわらかな笑顔を見せていた。

幸が微笑むのを見た瞬間――目に溜まっていた涙が目じりを伝って流れはじめる。


「ふっ…………。……ゆき…………」

「大丈夫、もう大丈夫だよ。辛かったんだね」

オレの身に何が起こったのかも知るはずないのに、幸は頭を撫でながらそう言ったんだ。

本当は、こうしてほしかった。

本当は、オレのことを気にかけて、抱きしめて欲しかったんだ。


「ふっ…………ゆきぃ……」

幸にしがみついて、あたたかな幸の体温を感じながら泣きじゃくった。



あれからどのくらい時間が過ぎたのかわからない。

目から流れていた涙はもう引っ込んでいる。

嗚咽(おえつ)もなんとか治まった。


尻尾が一本しかない妖狐の姿だったオレは、あまりの恐怖から、人型になることに成功した。

人型になったオレの姿を見たことがない幸なのに、両足に巻かれている包帯ですぐに、『古都』だと気がついたらしい。

狐から人型になるなんて、普通の人間なら頭から打ち消すのに、幸は疑いもしなかった。

なんでかって訊(き)いたら、『やけに人間の言葉を理解しすぎているような感じがしたから』っていうことだった。





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