chapter:蘇る苦痛と恐怖 目いっぱい動いていたオレの手足も次第に静かになっていった。 「大丈夫、何もしないよ……」 「……っつ!!」 幸は、冷たくなったオレの身体を抱きしめた。 「君は……古都なんだね」 少し身体を離し、オレの顔を自分の瞳に入れた幸の表情は、やわらかな笑顔を見せていた。 幸が微笑むのを見た瞬間――目に溜まっていた涙が目じりを伝って流れはじめる。 「ふっ…………。……ゆき…………」 「大丈夫、もう大丈夫だよ。辛かったんだね」 オレの身に何が起こったのかも知るはずないのに、幸は頭を撫でながらそう言ったんだ。 本当は、こうしてほしかった。 本当は、オレのことを気にかけて、抱きしめて欲しかったんだ。 「ふっ…………ゆきぃ……」 幸にしがみついて、あたたかな幸の体温を感じながら泣きじゃくった。 あれからどのくらい時間が過ぎたのかわからない。 目から流れていた涙はもう引っ込んでいる。 嗚咽(おえつ)もなんとか治まった。 尻尾が一本しかない妖狐の姿だったオレは、あまりの恐怖から、人型になることに成功した。 人型になったオレの姿を見たことがない幸なのに、両足に巻かれている包帯ですぐに、『古都』だと気がついたらしい。 狐から人型になるなんて、普通の人間なら頭から打ち消すのに、幸は疑いもしなかった。 なんでかって訊(き)いたら、『やけに人間の言葉を理解しすぎているような感じがしたから』っていうことだった。 |