迷える小狐に愛の手を。
第六話





chapter:蘇る苦痛と恐怖





幸は、三階がやけに騒がしくて、妙な気持ちになったからココに来たんだって言った。

そうしたら、家の中に入れたはずのないドーベルマンが居て、オレが奴を睨んでいたというわけだ。


オレは、オレがドーベルマンに襲われそうになっていた頃、一階で何をしていたのかって訊くと、幸は顔をしかめて、思い出したくもないというように首を横に振った後、一息に早口で説明をしてくれた。


最後の患者があの女が連れていたドーベルマンだと思わなかったらしい。

診察を終えると彼女はすぐ幸に言い寄って、他に人がいないと知ると、自動ドアのスイッチを切って、近くにあったソファーに押し倒してきたんだって。


幸は、その女に、気持ちはないと伝えたのに、まったく聞く耳を持ってくれなかったらしい。

女は目の前で下着を脱ぎはじめ、だけどまさか女性に暴力を振るうわけにもいかないから、どうやってこの場をやり過ごそうと考えていると、上から犬の脅えた鳴き声と大きな物音が聞こえたんだって。

何事かと三階に行けば、そこに人間の姿をしたオレがいたんだって――。


なかなか来てくれない幸にそういうことがあったんだって理解すると、胸の中のモヤモヤがなくなって、スッキリした。


幸が嘘をついている可能性だってあるのに、オレが素直に納得したのは、やっぱりドーベルマンが言ったような行動を、幸がとるわけがないと思ったからだ。





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