迷える小狐に愛の手を。
第六話





chapter:蘇る苦痛と恐怖





「ダメだ。神楽はきっとオレを探し出す。その時、幸と加奈子は逃げなきゃいけない」


幸は、そこへきて、ようやく口を開ける。

反論をしようとしているみたいだ。

でも待って。

今はオレの言葉を聞いて欲しい。

だから、幸の言葉を待たず、オレは話を続けた。


「オレと神楽は妖狐と言われる一族で、長年生きた狐が知恵と力をつけ、妖力を持つようになった存在なんだ。

オレの父さんは妖狐族を束ねる長で、人間の世界も乗っ取ることが出来るほどの強大な力を持っていた。

でも、父さんは穏やかな人で、平和を望んだ。
だから、妖狐一族は山の奥深くに身を隠し、ひっそりと穏やかに過ごしていたんだ。

オレの一族は、成人を迎えると花嫁探しの旅に出る。

花嫁が見つかれば、また戻ってきて、子供を産んで家族を増やすんだ。

みんなそうやって父さんから離れ、花嫁探しに旅立った。だけど、オレはまだ成人してなくて、神楽と父さん、母さんと一緒に行動をしていたそんなある日だった。


神楽が……」



そこまで言ったら、オレの口の中に唾がなくなっているのが分かった。

喉がカラカラになっている。


ぜぇぜぇ、と息が切れるのは、父さんと母さんが白い雪の上で真っ赤な血を流して横たわっていたその時のことを思い出したからだ。


そこから意識を遠ざけようと、ぎゅっと目をつむっても、結果は同じ――。

鮮明に雪の上に横たわるふたりの姿が見えるばかりだ。






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