迷える小狐に愛の手を。
第六話





chapter:蘇る苦痛と恐怖





――父さん。

母さん。



ごめんなさい。


オレ……出来そこないの妖狐だ。


何が、『次期妖狐族の王』だよ。

ひとりじゃ何も出来ないくせに強がってさ……。


自分の力さえも上手く使いこなせないなんて、とんだ間抜け者じゃねぇか!


これじゃ、神楽に利用されるのは当たり前だ。

本当の愚か者は、神楽じゃなくて、何もできない、無力なオレだ。


「あ、あのな。オレから力を奪う方法はね、オレと身体を繋げることで……。お前と逢ったその直前まで、オレは同じ性別の神楽に身体を……」


「いい!! もう、それ以上、何も言うな!!」

幸は怒鳴ってオレの言葉をさえぎると、強く抱きしめてくれた。

自分を責めはじめたオレの心情が分かったみたいだった。


「もういい。古都、それ以上は何も言わなくていいんだ……」

その言葉に……。

オレの胸がまた締めつけられ、せっかく引いた涙が、また溢れはじめた。



――ゆき。

幸……。



「幸……おれ……オレっ!!」


溢れ出る悲しみを我慢できなくなったオレは、口から嗚咽を吐き出し、静かに泣いた。





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