chapter:蘇る苦痛と恐怖 ――父さん。 母さん。 ごめんなさい。 オレ……出来そこないの妖狐だ。 何が、『次期妖狐族の王』だよ。 ひとりじゃ何も出来ないくせに強がってさ……。 自分の力さえも上手く使いこなせないなんて、とんだ間抜け者じゃねぇか! これじゃ、神楽に利用されるのは当たり前だ。 本当の愚か者は、神楽じゃなくて、何もできない、無力なオレだ。 「あ、あのな。オレから力を奪う方法はね、オレと身体を繋げることで……。お前と逢ったその直前まで、オレは同じ性別の神楽に身体を……」 「いい!! もう、それ以上、何も言うな!!」 幸は怒鳴ってオレの言葉をさえぎると、強く抱きしめてくれた。 自分を責めはじめたオレの心情が分かったみたいだった。 「もういい。古都、それ以上は何も言わなくていいんだ……」 その言葉に……。 オレの胸がまた締めつけられ、せっかく引いた涙が、また溢れはじめた。 ――ゆき。 幸……。 「幸……おれ……オレっ!!」 溢れ出る悲しみを我慢できなくなったオレは、口から嗚咽を吐き出し、静かに泣いた。 |