chapter:漆黒の刃が獲物を狙う時を待つ―side:神楽 ふん。 俺の色香はどうやら人間すべてを翻弄(ほんろう)することができるらしい。 ――だが、古都は違う。 あいつは、俺の色香には全くと言っていいほど無関心だ。 それは昔からの付き合いだということが関係しているのかもしれない。 古都の両親と俺の両親は昔からの知人で、仲が良かった。 当然、俺と古都も仲が良くて、いつも隣に寄り添うようにしていた。 俺が十四歳になった頃、俺の両親は死んだ。 山奥で見つけた美しい泉に足を踏み入れたのが運のつきだった。 父さんと母さんは山奥で美しい湖を見つけたからみんなで一度行ってみようと、古都の親父さんに話していたのを偶然聞いたんだ。 だが、その言葉に、古都の親父さんは同意しなかった。 なんでも、今まで足を踏み入れたことがない湖には何が居るのかわからないということだった。 そんな親父さんの意見は妖狐族の王としてもっともな判断だ。 なにせ、妖狐一族の全責任が親父さんの両肩にかかっているのだから……。 だけど、父さんと母さんは納得しなかった。 妖狐族は肩身を狭くして隠れ住むのではなく、広々とした世界で生きたいという願望があった。 だから、父さんと母さんは、ある日、俺を古都の親父さんに預けて、湖の安全を証明しようと村を出た。 だが、そこで両親と出くわしたのは安全な湖ではなく、猟師を生業としている人間だった。 |