迷える小狐に愛の手を。
プロローグ





chapter:プロローグ





あまりの恐怖で、身体も、足掻(あが)くことを忘れ、硬直してしまうと、オレを組み敷いている神楽は、それを同意と受け取ったのか、腰に巻いてあった紐の結び目を歯で捉(とら)え、器用に口だけで解いていく。



そして……。



オレはとうとう、神楽によって裸にされた。

自分がどういう状況に陥(おちい)っているのかを知ったのは、凍えるような寒さが全身を襲ったからだ。


「やはり古都の肌は、この降り積もる雪と同じくらい白くて、とても美しい。それに……ああ、ココもすごく綺麗だ」

そう言って、神楽はオレの太腿に顔を埋めた。


「……っつ!!」

ビクンッ。

オレの腰が跳ねる。

だけど、それは気持ちがいいからとかそんなんじゃない。

怖いからだ……。



父さんと母さんはコイツに殺された。

オレと、オレの力を手に入れるためだけに……。



冷酷な神楽から視線を逸らし、頭上で朱に染まったふたつの躯(つがい)を瞳に入れると、胃から口へと向かって、酸っぱいものが押し上げてきた。


視界は歪(ゆが)み、父さんと母さんが見えなくなる。



目じりに違和感があったから、たぶん涙が流れているんだろう。



こんなことになるんだったら……。


こういうことになるんだったら、さっさとコイツにオレのすべてを渡せばよかった。



そうしたら、父さんと母さんは死なずにすんだかもしれないのに――……。



――いや、だけど神楽は冷酷な奴だ。





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