迷える小狐に愛の手を。
第八話





chapter:暴れん坊古都くん







「古都(こと)、もう狐の姿には戻らないの?」


幸(ゆき)が尋ねてきたのは、オレがひとしきり泣きまくって、落ち着いた後。

リビングにある四人掛けのテーブルで幸と向かい合って座っている現在(いま)。

オレは昼食と言う名の、紅色のサケを頬張っていた。


人型になっているため、さすがにいつまでも裸というわけにはいかないから服は幸のを貸してもらっている。

いくら同性だからっていっても、他人の前で全裸は恥ずかしいもんな。

そんなオレの服装は、白いTシャツの袖をまくりまくって肘の部分まで上げている。

長すぎるベージュのズボンの裾は三つほど折ってもかなりダボダボだ。

人間の姿になった今でも幸との体格の差を思い知らされて、ちょっと男としてのプライドを保つことができない。


「ん……。

狐から人型になったのは、衝撃があまりにも強すぎたからっていうヤツで、まだ体力回復してねぇんだ。

狐の戻り方がわかんねぇんだよ。

もともと、オレたち妖狐は九つの尻尾があるんだ。

その尻尾から妖力を出すんだけどな。今のオレは狐になっても一本しか尻尾がねぇ。


つまり、普通の狐と変わらないんだ。

妖力もゼロに近い」


ムシャムシャとサケを口いっぱいに入れながら、幸に説明した。

「なるほど……」

幸はそんなオレの言葉にひとつ、うなずくとニッコリと微笑んだ。



何かあるのか?


意味も分からず、『?』マークを飛ばしていると、幸は口をひらいた。





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