迷える小狐に愛の手を。
第九話





chapter:運命の出会い。はじめてのお買い物





「ごめんね。遅くなって」

内心、急いで逃げていった男ふたりの背中にうなずいていると、幸はオレに、掌(てのひら)にちょこんと乗るくらいの、紙で出来たカップを差し出した。


そんな幸の表情はいつもと変わらないニコニコ顔だ。


「あ、いや……オレはひとりでもだいじょうぶ……です」

敬語になるのはなんでだろう?


……なんて思っても、答えはすでに出ているのかもしれない。

だって、さっきの、幸の雰囲気は並のものじゃなかったから……。


長年生きている妖狐でも、そんな雰囲気はかもし出せないんじゃないかっていうくらい。
普段ニコニコしてる奴が怒るのって、半端なく怖いもんなんだな。

オレは今日、ちょこっと心理というものを知った。


「冷めてっ!!」

幸について色々考えを巡らせていると、幸に手渡されたカップから、ジンワリ冷たい感触が伝わってくる。

冷たいと思っても手を離さないでいると、今度はジン……と痺(しび)れて、手の感覚がなくなってくる。

オレは慌ててテーブルの上に置いた。


「これが、『あいすくりーむ』?」

「そうだよ、開けてみて? これで食べるんだ」

幸は右手に持っていた棒切れを手渡してくれた。

オレは幸から棒切れを受け取ると、カップのフタを取って中を覗く。

そうしたら……。

クリーム色をした平坦なものがカップいっぱいに詰まっていた。

太陽の光を浴びた、『あいすくりーむ』は、氷のようにキラキラ輝いている。





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